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【interview】日常の視点から生まれるライフスタイルを提案する神戸のセレクトショップ「Fab4」
兵庫県神戸市に位置し、関西で有数の有名セレクトショップに数えられる「Fab4(ファブフォー)」。多面から日が射す開放感は、どこか人と人との団欒が聞こえてきそうな趣のある空間だ。有名となれば個人的なイメージであれ押しの強さがどうしても拭えない。それをまったく感じさせない空間でありながら有名とされる秘密は何なのか。オーナーの宮津氏にお話を伺った。
− 価値観を深く掘り下げて垣根を取り払うハブのようなショップを創りたい
ショップは常に変化し続けるもので、商品構成に関わる継続的なショップコンセプトは設けていない。空間的な意味での一つの箱として、世界中のヒト、コト、モノといった価値観を繋げる場所がセレクトショップだと言う。あえてコンセプトを言葉に表すならば、〈居心地の良い空間〉だ。
今は経済状況や時代も変わり、ECサイトやファストファッションの台頭等含めてファッションの楽しみ方も買い方も人それぞれで違う。極論を言えば、お金を出せば、ブランドもお店も含めて簡単にモノは作れてしまう時代となっている。ショップも、ブランド、商品構成を真似をしようと思えば誰でもできるようになっている。SNSの見せ方にしても例に漏れずそうだ。そんな画一化された世界とは無縁なところで物事の価値を深く掘り下げ、垣根を取り払う全てのハブ(一つの箱)のような〈居心地の良い空間〉を目指すのがFab4だ。
− 鳥瞰して時代感を捉えるバイイング
シーズン毎にある程度のテーマを設定し、そこから連想するシチュエーションやスタイルをアイテムに反映させていくのが宮津氏のバイイングスタイル。トレンドと呼ばれる要素は、極力、避けるようにしており、テーマに上手くエディットするように心掛けている。
優れたプロダクトは世の中に沢山あるが故に、集めるのが昔ほど難しくはなくなってきている。だからこそ軸に設けているのは、昔からずっと好きなデザインをしている〈ピーター・サヴィル〉の言葉だ。「その時代のイメージというか、どう感じ考えているか、何が好きなのか、何が起きているか、何が影響を与えているのかに興味がある。それを僕はデザインにする」というのに、トレンドではなく、鳥瞰して時代感を感じる。そのため、ブランドの作り手自身も時代をどう感じ考えているか、デザインにその人の顔が想像できるブランドを好む傾向があると言う。
−ブランドとお客さんのハブになりきる
接客に関しては、ブランドの背景まで細かに説明する。ホームページに「Wrong or Right, It’s Alright」というメッセージが記載している通り、こだわりはすごくある反面、It’s Alrightという気持ちも。「お客様の好みも常に流動していくものだと思っているので、どなたでもご興味があれば歓迎」というスタンスだ。宮津氏が気に入ったモノを集めているので、好きか?嫌いか?という好みの問題は強制しない。
しかし、ブランドの背景にまで興味のある方が同店に足を運ぶことが多い。そのため洋服やスタイルのフォロー、カルチャー、音楽の話までしっかりと接客するのが“ハブ”としてのFab4流。「販売という伝える仕事なので、伝えれることと、そのフォローはしっかりとするようにはしています。もちろん世間話も交えながら楽しくやらせていただいてますね。」とも宮津氏は語る。
− デザイナーの顔が見えるブランドピックアップ
今、最も時代を捉えて表現できる杞憂稀なデザイナー 山岸慎平氏が作り出すスタイルとテーマはシーズン毎に進化している。ステレオタイプといわれる、分かりやすく着やすい、そして買いやすいブランドが溢れている中、混交した多彩な背景やスタイルが光る。シーズン毎の急進的な進化、実験性、変化に富んだスタイルが特徴的で今後最も期待しているブランドだと言う。
宮津氏個人でも展示会を毎シーズン楽しみにしているUNUSED(アンユーズド)。もはや説明不要、とにかく全てのバランスやクオリティが高くミックスの完成度含めて、常に時代の一歩先を提案するブランドだ。その先進性は、ファブリック、縫製、仕様、その細かに考えられたディテールとアイテムを見ては、未だに勉強することが多いと痛感するほど。
2015A/Wデビューの「ESSAY(エッセイ)」。今、Fab4では絶賛打ち出し中のブランドだ。細かなディテール、シルエット、スタイルは自分たちの立ち位置をしっかりと考えて作られている。試験的なデザインと80-90’s特有のカルチャーにもあるダサさとカッコよさを上手く“今”の気分に寄せてデザインとして表現している点がお気に入り。デビューして間もない中、お客様からの反応も想像以上で今後伸びていく可能性大だと言う。今後の動向に注目だ。
Fab4では唯一となるレディースブランド「PHEENY(フィーニー)」。マイペースに丁寧に丁寧に作られてるテーマと、上質なリアルクローズに存在する絶対的な安心感がブランドの強み。憧れるようなブランドではないかもしれませんが、身近な寄り添ってくれるブランド。一見何でもないような服が引き出してくれる女性らしさやニュアンスが、ふと手にとってしまう秘密だと言う。
ネットの流通が変化の早い時代を規定しているのは周知のこと、ありがちな二元論に立って言えば、それに連いて行こうとする人、行かまいとする人がいるのもまた然り。「時代感」を捉えながら「It’s Alright」と語る宮津氏はどちらに位置付くのだろうか、あるいはどちらでもないのか。そういえば古典とされるものが今でも読まれることの意味は何なのだろうか。古くからあるのに今読んでも水々しさを感じるのが一つの理由だ。その意味で、既存の価値を深く掘り下げることが、新しさへの近道だ。深さが新しさの源とするFab4の水々しさに今後も注目していきたい。
Fab4
兵庫県神戸市中央区三宮町2丁目5-8 三宮サンクスビル 3F
Tel.078-327-8285 OPEN.12:00-20:30
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Text.Shunsuke Mizoguchi