FEATURE
千歳船橋 LICLEが、”今セレクトショップをオープンした理由”とは?
そこに生息しているレアポケモンが初めての場所にも人の足を動かしてくれるように、その街に行くことの意味を与えてくれるのがそこに根ざしているお店の数々。ラーメン好きなら江古田に、お酒好きなら酒好きが集まる新橋に。とりわけ洋服好きなら…。
今回は、大阪の中崎町のWUNDER、学芸大学のLINKS、中目黒のCoperに続き、初めて行く人も多いであろう千歳船橋にお店を構えるLICLEの鶴田さんにインタビュー。なぜ「今」千歳船橋にお店をオープンしたのか?話をしに行ってみました。
・自分の洋服遍歴を表現したかった。
− 店名のLICLEって造語ですよね?ググって検索順位がたしか一位だったので。まさにお店を名指す固有名詞の由来は何ですか?
洋服が好きだっていうLIKEと、周期っていう意味でのCICLEを掛け合わせたものですね。洋服自体古着から入っていって、まさかの雑誌のCHOKI−CHOKIも間に入り、次にストリートもはいってっていう、そのグルーッとジャンルを横断してきたわけですよ。それで今がちょうどいい真ん中ぐらいに位置するような気がして。
−もう一周してきたんですね。その時々で洋服のジャンルを超えるきっかけって何だったんですか?
それはもう人の影響ですね。
− やっぱりそうなんですね。
それでだんだん自分にしっくりくる形になったのが大手セレクトショップ時代に勤めていた時でしたね。それでそれをお店で表現しようっていうことでLICLEを始めました。まだこれからやっていきたいブランドもあってまだまだ少ないですけどね。
− お店の中で鶴田さんの遍歴を一覧できるイメージですかね?
そうですね。だから次はサノバチーズも取り扱いを始めようと思ってます。
− あぁスケートやってたときがあるのであのノリは好きです。鶴田さんの遍歴にもストリートがありましたね。
なんかサノバチーズは関西の女の子にめちゃめちゃ人気らしいんですよ。関西の女の子はみんなサノバチーズみたいな。
− へぇ。いい環境だぁ(笑)みんなハンバーガー食べてるんですかね(笑)
はははは(笑)
− 関西圏で強い雑誌のカジカジの影響もあるんでしょうね。
あぁそうですね。だからそういう感じで小さいお店ながらも発信力をもってやっていきたいですね。今だったらキャップが主に女の子で流行ってるのでこっちではあまり知られていないブランドでも知ってもらえるのかなって。
− 立ち上げて2ヶ月とまだ短いながらも大変な毎日だとは思うんですけど、いらっしゃるお客さんってどんな方が多いんですか?
ここ最近は古着に強い方が多いですね。絶対自分よりも古着知ってるなって人が多いです。勉強になります、みたいな(笑)
− それは、なんだろう、ファッションとしても古着を楽しんでる方ですか?
そうですそうです。古着をよく知ってるだけにやっぱり着方も面白いですね。
− 知ってるからこそ着こなしにも深みが出るんだろうなー。STYLER含めブログやSNSで積極的にスタイリングなどの写真を発信しているからそういう方もいらっしゃるんでしょうね。
場所が場所なんでまだまだ広げて行きたいですけどね。
・最初の候補は沖縄。
− たしかに、場所が予想外というか、新しいですよね。それまでは洋服のイメージがなかった場所に急に洋服屋ができたぞっていう印象です。お店を始めようときっかけって何だったんですか?
それはもう完全にSEPTISでの経験ですね。老舗ブランドを多く扱ってる店ですけど意外と独立志向なんですよ。僕と同い年で働いていた人も独立するっていう前提で入ったりして。
− 登竜門ですね。
まさにそうですね。“独立してなんぼでしょ”っていう価値観があって。やっぱり経営と仕入れの部分がすごくて。僕は特に仕入れの部分でEDWINとLevi’s XXを任せてもらえたんですけど、かなり学ばせてもらいましたね。
− その後に独立されたんですか?
実は飲食を挟んでいて(笑)その後にレディースブランドでディストリビューターを担当しました。そこでお店を始めるにあたっての資金もそうですし、運営方法もそうですし、周辺が固まってきて、独立って感じですね。専門的な部分が多い仕事だったのでタイミングを見つけるのが難しかったですけど。
− その難しさは独立する時もやっぱり?
ありますね。セレクトショップの特性上、ブランドは被ってしまうので。それが同じ範囲内にあると取り扱いが難しかったりします。いわゆるバッティングですね。そうするとブランドを取り扱うことができない。
− それは他のショップさんでもよく聞きますね。
取引に関して他に言えば、あるブランドのオーダー分の半分がドロップしちゃって(笑)
− え。半分…。
自分が一番気に入っていたコートがあって自分でも欲しいっていうのが一つあったんですけどそれもドロップしちゃって。自分が付けてるのは間違えてたかな、みたいな。自分のセンスを疑っちゃいましたね。ははは(笑)
− そのままでいてほしいです(笑)バッティングの話からすれば出店する街もある程度絞られてしまいそうですね。
始めはかなり考えましたね。それもあって実は当初は沖縄でお店をやろうと思ってたんですよ。沖縄の牧志ってところです。
− 沖縄。
一番仲良くしてもらってる先輩が沖縄の人でそのススメがあってですね。現地に実際行ってみて物件なども見ました。そこにあるショップの方ともお話させていただいたりして。
− 現地はどうでしたか?
そのショップの店員さんにバスの通り道とか教えてもらったりもして。すげー優しいんですよ。やっぱり沖縄の人は優しいのかと。いいなーとは思ってたんですけど、リスクがデカイ。土地が高いし何より地元じゃないですし。それで沖縄への出店は諦めました。
− 知らない土地だと不安ですよね。
それで東京だとどこかなーって考えて、SEPTIS時代に住んでた三軒茶屋がある世田谷区がいいかなって。次にブランドが被らないのは東横、田都、小田急のうちどれだと。
− なるほど。
そうです。京王はすでに10年近くやられているショップさんがその街の代名詞的なショップになってるんですよ。単純にすごいなーって。だから京王は候補には挙がってこなくって。でも逆にそのショップさんのように特に洋服屋が無かった場所でもその街を盛り上げていくっていうすごいところを見習いたかったんですよね。そんな存在になりたいなーって。その結果小田急線に目をつけて、経堂を軸に物件を探しました。
・ゆるさ=「人類は皆平等」
− たしかにここらへんは衣食住全般に気を使ってる人が多そうですよね。仙川もそのようなムードが漂ってますし。僕らとしてもLICLE最大の謎がなぜ千歳船橋かってことだったんですよね。腹落ちです。
で、物件探しをしていて一軒目がここと。
− え…(笑)一発目ですか?(笑)
そうです(笑)ドアを開けてその一瞬の雰囲気で決めました。自分が住む自分の部屋もそうなんですよ。いつも一軒か二軒しか見なくて(笑)
− いつも当たっていたのか、はたまた鶴田さんがゆるいというか…。不動産屋もびっくりですね。言われてみれば初見のお客さんも入った時の印象が大切ですよね。その後の滞在時間に影響が…(笑)千歳船橋のアパレルを支えるパイオニアになるのが楽しみですね。
言われたいですね。オーナー兼パイオニアみたいな(笑)
− そのショップさんは10年やられてるんですよね。それで行くと先行者がそれぐらいの期間を要して今に至ると考えるとかなりの覚悟がいりますね。
リアルな話、10年後って自分が40歳になってるじゃないですか。で40歳になって店を閉めたとして…んじゃ、飛ぶかみたいな(笑)
− (笑)いや大変ですね。
ここまできたら変な話、もうなるようになるべ、みたいな感じです(笑)僕はいつもとりあえずやって、とりあえずやり尽くして、よくてもダメでもとりあえずまたやる、っていう感じでやってきたので。社会人ではあまりとりあえずというのは使っちゃダメですけどね。それが信念だったりします。
− 意外と大事だったりしますからね。
自分でも思うんですけどものすごくラフですよね(笑)多分20歳前半に読んだアインシュタインの自伝が影響してるんですよ。それでそこには「人類は皆平等だ」みたいなことが書いてあって。ちょー感銘受けて、やべーわみたいな。だから今も自分はフラットで居続けてますね。
− でもどうですか。2ヶ月営業してみて。
再来店してくれる方も徐々に増えてきましたね。もちろんふらっときて様子見する感じで初めてくるお客さんも結構いて。最初は全然それでいいんですよ。
− ネットで千葉から来てくれたお客さんもいらっしゃったっとか。
そうですそうです。
− 今後はそういうお客さをもっと増やして営業後に一緒に飯食えたりなんかできたらいいですよね。
そうですそうですそうです。ほんとそうなんですよ。お店に来て駄弁って、でいいんです。もちろん洋服も買ってもらえたら嬉しいですけどね。
− 鶴田さんと親しくなるのは早そうですけどね。事実僕らがお会いするのは3回目ですし。
そうなんですかねー。これまでいじられ続けた人生だったんですけどね。後輩ともいつの間にか対等の関係になってますし(笑)
− まさにそんな印象はあります(笑)千歳船橋でどこかおいしいお店は見つけましたか?
線路の反対側に僕は住んでるんですけど、そっちにいいお店を見つけましたね。その夫婦がなんかいい感じで。そこで同じくお客さんとして来てた同い年の男の子と会って。Amazonに勤めてるらしく、その子にうちの広告関係をやってもらってます。
− へぇ!すごいですね。そこまでいっちゃうんですね。それはもう鶴田さんの人柄ですよ。
いやいや(恐縮)。それ見てたら素人目ながら、いろいろやっていかなきゃーと思いましたね。検索順位で一位「レディース セレクトショップ」で3位が「メンズ セレクトショップ」だったんでどうしよってなって(笑)今から顔を中性的に寄せてこうかななんて考えてましたけど笑)
− いやいや、髭ボーボーじゃないですか(笑)
たしかに(笑)
− セレクトするブランドの拡大含め、今後はどのように展開していく予定ですか?
陰と陽をテーマにやっていきたいと思っていて。それ言葉をテーマにしてるのって新鮮じゃないですか。それで店内の内装はら白と黒できっちり縦二分割して、白は明るめなブランドを、黒はダークなブランドを置いてっていうのを考えてます。置いてあるのはラックのみの真っさらな空間のお店ですね。
− それは新しい。というか斬新ですね。
黒のほうはもう照明をつけないでやろうかなと(笑)黒のほうには10ドルのへんてこな古着のTシャツとか置いてるみたいな(笑)
− 鶴田さんの性格が全面に出たお店ですね(笑)でもここだと真っ二つにはできないような気が…。
ですね(笑)どこかに移転しなきゃいけないです。
− いやぁ、ほんと、鶴田さんは自由人っていう感じがしますね。移転先は是非千歳船橋内でよろしくお願いします(笑)本日はどうもありがとうございました。
いやいや、こちらこそ遠くまで来ていただきありがとうございました。
LICLE
「人類は皆平等」をモットーとする鶴田さんがオーナーを務める千歳船橋のセレクトショップ。本人の持っているゆるさがそのままお店で過ごす時間につながる。癒しを求めるも良し、服を求めるも良し。セレクトブランドは、tim.・crepuscule・LIVING CONCEPT・S.E.H KELLY・ED ROBERT JUDSONなどのインポート、ドメスティックブランドをメンズ・レディース共に取り扱い。今後はまずストリート系に分類されるブランドを多く扱っていく予定。アメリカから直接仕入れた古着も店頭で販売。
東京都世田谷区船橋1-38-10 ロータス千歳船橋1F
TEL.03-6411-2188
OPEN.14:00~22:00(TUE~FRI)13:00~21:00(SAT~SUN)
CLOSE.MON(祝日は13:00~21:00まで)