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「着るセメダイン」光るドレスをデザイン・製作したデザイナーOlga氏にインタビュー
先日、東京ビッグサイトで開催された「ウェアラブルEXPO」にも出品され、話題をさらった光るドレスこと「着るセメダイン」。こちらはセメダイン社が開発した、『セメダインSX-ECA』という布に簡便に導電性が付与でき、かつ布への接着・追従性に優れた導電性ペーストを使って製作されたドレスです。
今回は、着るウェアラブルデバイスとも言える「着るセメダイン」の製作・デザインを手がけたデザイナーOlga氏(Etw.Vonneguet)にインタビュー。セメダイン社のドレスを製作することになった経緯や、今回のドレスのコンセプトについてなどを伺いました。
・「今回着るセメダイン」を手掛けることになった経緯は?
友人で、日本舞踊の藤間蘭翔( ふじまらんしょう)という女性がいるんですが、その方にお声掛け頂いたのがきっかけで、今回のセメダインさんのドレスを製作することになりました。
・製作期間はどれくらい?
製作は一ヶ月かかりましたね。でも、衣装製作にしては長いほうかなと思います。
・製作はどうやって始まった?
セメダインさんの導電性接着剤は、従来の製品ラインナップの中にあったもので、それを使ってウェアラブルデバイスで面白いことができないかということで。今回のウェアラブルEXPOでのプレゼンテーションに向けてやってみようというのが始まりだったんです。「着るセメダイン」を制作していくうちに、布に導電性接着剤を塗布することで立ちはだかる問題点を、技術面で大いにサポート頂いたAgICさんにご協力頂き、一つ一つ解決しながらの制作でしたね。
・「着るセメダイン」のコンセプトは?
この技術によって創られたものは、2020年のオリンピックを視野に入れたかったので、そこから逆算して考えると、日本らしいものかなと感じていて。セメダインさんも老舗の企業なので、メイドインジャパンという要素と、きっかけをくれた藤間蘭翔が日本舞踊という事で、着物をベースにしたデザインというのは、自然な流れでした。
セメダインSX-ECA は、ファッション側からしたら「ただの接着剤?」みたいな先入観があると思うんですけど(笑)。分かりやすく言うと、銀色のプリントだと思ってもらえるといいかなと。Tシャツに転写プリントとかするじゃないですか?それが単純に電気が通るようなプリントになるよ、と言った方が伝わるのかなと思います。
つまり将来的には、自分の好きなデザインをプリントして、プリント部分に電気が通るようになり、センサー等によって計測された数値がトリガーになり、アクションが起こせるようになったりする、ということなんですよ。
それに今回の導電性接着剤の最大のポイントは、デザイン面での自由度なんです。「着るセメダイン」での回路のデザインも、下から上にグラデーションになるようにLEDをランダムに配置しているんです。LEDをそんな風に、より自由に配置するには、デザインに対して自由度の高い導電性接着剤のメリットであり、 粉雪のような光りのデザインが、 それを一番伝えられると思ったので。
・実際の着用感は?
今回はLEDを全部で2400個ほど使用しているのですが、接着剤自体の配合が銀なので、結構重いんですよ。ただ、あんなに回路を使わないなら、重くはないので、そこは気にしないでもらいたいです(笑)。要は、使用する接着剤の分だけ重くなるという事です。
ただ、さっき言ったように銀プリントみたいなものなので、普通の服にプリントしてあるだけという感覚で、着用感はいたって普通ですね。生地の素材感を邪魔しない、というのもこの セメダインSX-ECAの特徴なんです。勿論、適合する生地の実験は継続する必要はありますが。
・今後の「着るセメダイン」の展開は?
プロダクトレベルまで技術を押し上げる必要があると思っています。セメダインさんや、今回の技術的サポートで大いにご協力頂いたAgICさんは、テクノロジーのプロなので、そこからデザインという武器によって、ファッションやエンターテイメントに啓蒙していく役割が、私にあるのかなと思っていて。Etw.Vonneguetという自分のブランドを使って面白い事を、というのもありますし、某有名アーティストに衣装として制作するというのもあると思いますね。
Text.Yuya Iwasaki