FEATURE
ショップ店員が行く、気になるあのお店 〜10年後も着たい洋服が集まる「sunday people」〜
お店の中の人のお店訪問
ネットで見てはいるものの、なかなか行く機会がないお店。そんな両者を突き合わせたのが今回の企画。題して「ショップ店員が行く、気になるあのお店 」。やっぱり他のお店に行っても話の中心になるのは洋服?それとも業界人ならではの話?
今回は後編。新宿御苑 store aの店主/一明さんが代々木上原sunday peopleの吉村さんの元へ訪問。いちお客さんとして接客を受ける様子を取材。
— プロローグ
Y:元々カーペットとか敷いてある完全なオフィスみたいな感じだったんで、全部、天井と床を剥いで塗って、って感じですね。
I:超かっこいい。インスタでよく見た光景だ。そういえば吉村さん、インスタで着画を投稿してないですよね?僕もそうなんですけど、ショップの中では珍しいんじゃないかと。
Y:単純に恥ずかしがり屋なだけです(笑)。
I:僕も(笑)。
— モデルを立てたりとかは?
I:そっちの方が伝わりやすいんでしょうけどね。でも恥ずかしくて。だから、変なこと書いちゃうんです。
Y:着画載せたら、変にカッコつけてる感じに見られそうですしね。僕はインスタに関しては個人とお店の中間ぐらいのポジショニングでいきたいと思っていて。それで「僕」とか「私」とか使わないで男女わからないようにしてます。だから、いざお客さんが来た時も「女性だと思ってました」と言う人が結構いて(笑)。
I:(笑)。トルソーも置いてないですよね。うちも置いてなかったんですよ。でも、あまりにも不安になって買ったんですよ。「潰れるぞ」ってなって。
Y:トルソーありましたっけ?
I:真ん中に一体だけ。
自社ブランドはGROUPIE
store a / 一明(オーナー):前職は中目黒の某セレクトショップでバイヤー兼店長を担当。その後、新宿御苑にstore aを構え、今年で3年目。ユニセックスの提案で男女ともに多くの客を集める。
I:GROUPIEの比率はどのぐらいなんですか?
Y:3~5割ぐらいですね。その辺はすべてGROUPIEです。
I:これはキッズ?
Y:デンマークのブランドで、キッズなんですけどレディース提案で売っているんです。日本の女性だとみんな着れちゃうんで。
I:たしかに。それにしても、オリジナル、うまいですね。
Y:GROUPIEは、展示会ベースでやってたんですけど、もうお店ベースのもの作りに変えちゃって。アイテムを絞ってやってます。
sunday people/吉村さん(オーナー):前職は某レディースブランドでMDを担当。コラボ企画立案や直営店のイベント企画&運営&VMDなど、多岐に渡って活躍。現在は『GROUPIE』のデザイナーの傍ら、セレクトショップであるsunday peopleを運営。
I:これが自社ブランドですもんね。
Y:パターンは全部オリジナル、というか生地を探してきてやってる感じですけど。
I:面白い。このぐらい作れるんだったらいい。
Y:そうすね。キャップも全部生地も形もオリジナルで。
I:これも?すごいかわいい。
Y:ジェットキャップよりもちょっと深めにしてて、女性も被れる感じにしてるんですよ。だから、女性ウケがすごくいい。あと、「GOOD DESIGN」って自分で言うなっていう。
— ツッコミどころを用意してるんですね。
Y:好きな人はやっぱりいるんですよね。
I:おもしろい。本当に新鮮ですね。
Y:まぁあまり見ないですからね。ひとんちのものは。
— sunday peopleさんといえば『SANDQVIST(サンドクヴィスト)』をよく提案してくれてますね。
Y:見た目はシンプルなんですけど、実際よく売れてますね。多分、日本だと大手さんはやってなくて、九州とか地方とかの個店でしかやってないんですよ。そういった意味でもウケがいいんでしょうね。値段もちょうどいいと思います。
I:安いっす。
Y:これで14,000円なんで。
I:ほんとだ。
I:あっ、これ。
Y:アサヒシューズですね。
I:ムーンスターと同じ工場のところですよね?アサヒシューズも上履き作ってますよね?
Y:そうです。
I:アサヒシューズの方がかわいいかもしれない。
Y:アサヒは結構デザインがいいんすよ。これ、アサヒの別ラインなんです。元々久留米でやってなかったんですけど、アパレルラインとしてこのラインだけを久留米のムーンスターと同じ工場でやってるんですよね。
I:いいっす。
Y:もう合同展とか結構出してたんで、これから結構増えるんじゃないかな。
I:しかも、そんなに高くないですよね。
Y:高くないです、13,000円なんで。
I:ムーンスターと変わらないですね。
I:これはC.QP? うち、これ売れましたよ。
Y:やっぱり。うちも目当ての人はよく買っていきます。やっぱり見た目がすごくかっこいいんですよね。他にはない。
I:うちもC.QP以外にできたばかりのブランドで今季入れる予定があるんですよ。スリッポンの型でレディースの展開も考えてて。それが28,000円。
Y:おぉーー。なかなかのお値段。
I:背景を少し言うと、ミハラかなんかのデザイナーをやってた人が独立したブランドで。それこそコモンプロジェクトとかも絡んでいたみたいで。ビブラムのソールでガチッとしててかわいいんですよね。でも値段がかわいくない(笑)。
Y:たしかに(笑)。
I:怖いですけど、どうしても入れたかったんで入れちゃいました(笑)。
Y:いまってスニーカーで2万円代のブランドが結構あるじゃないですか。僕はそれを売る自信がなくて。スニーカーって自分も絶対1万円代しか安心して買えないっていうのがあって。リュックもそう。2万円代を超えてくると「うーん…」ってなる。逆に1万円以下だと不安。お客さんも同じなんですよね。
I:わかります。
Y:だから、2万円しないぐらいがいいのかなって。
I:このへんも安いですね。
Y:そこもGROUPIEです。それは姫路のレザーや屋さんと協業して作ってて。この財布とかもそうなんですけど。
I:なるほど。
Y:牛革を使ってて、機能面が充実してるんですけど、これで27,000円。一応カラーも選べて、1.5週間ぐらいのお渡しでオーダーで作れる感じになってますね。
I:すごい。しかもジップがエクセラ、作りもしっかりしてる、いいやつだ。大きさも丁度いいですね。にしてもオリジナルの背景がすごい。
Y:最近になって自分のブランドの型数を減らしたんですよ。その 分いいものを作りたいなって。例えばキャップを作るのに韓国のユーポンのボディに刺繍を入れるだけで終わりっていうのもあるんですよ。それがすごい嫌で。やるんだったら一から作るぞって。それで一個一個職人さんに作ってもらってます。
I:すごい。欲しくなってきた(笑)。
Y:素材もウールを10%入れてるんで、柔らかくて被りやすいんですよ。
I:これいいな。うちで扱いたいです。難しいんですよね、キャップは特に。
Y:女性もよく被ってくれるんですけど、形がハマらないとね。
I:そうそう。やっぱり形。僕、ジェットキャップ似合わないんですよ。
Y:ジェットキャップよりも1cmぐらい深くしてます。
I:その数センチがね、大事。
Y:芯も元々柔らかいんですけど、前の2パネルしか入れてないんで被りやすいと思いますよ。
esgrayが似合う一明さん
I:これってサイズこれだけなんですか?
Y:基本は1と2のサイズ展開です。でもうちは1サイズしか入れてません。結構大きいです。
I:これは値段が、安いですね。
Y:しかも、内側がオリジナルの柄のキルトを使ってたりとか。
I:あっ、キルトは本物のやつを取ってるんですね。
Y:そうなんすよ。それは来季も継続みたいです。生地が岡山のクロキっていうディオールとかにも卸してるようなデニム生地なんですけど、縫製をベトナムでしているので安いんすよ。
I:安く作れているんですね。
Y:それにしても、安すぎるっていう。
I:これ、かわいい。
Y:けっこう入れたんですけど、それがラス1になっちゃって。まぁシャツ一枚買うぐらいの価格ですからね。自分自身ショップコートみたいな感じが好きなんで。
I:すごいわかります。
Y:バックのヒモはブランドのアイコンみたいな感じで。
— 一明さん、長い丈のコートが似合いますね。
I:短い丈だと恥ずかしくなるんですよね。これいいなー。いい雰囲気。
I:店内を見た感じ、がっつりとしたウールのアイテムを置いてないんですね。
Y:自分自身がそんなに着ないんで。そこは自分の考えを押し付ける感じになるんですけど(笑)。
I:なるほど、そういうスタンスなんですね。面白い。
Y:いいか悪いはわからないですけどね。
I:いいと思いますよ。僕は単純に寒がりなんでニットの取り扱いは多いと思います。でもダウンは着ないかな。
Y:自分も。
I:モンクレールが欲しい時があって、少しでも安いのを買おうと思ってネットで買ったら思いっきり偽物でしたね(笑)。
一同:(笑)。
I:メールとかしても相手方は無視。まぁ自分が悪いんですけどね。明らかに安すぎるなと思いつつ、買ってみたらやっぱり偽物で。
Y:そんなに安かったんですか?
I:たしか3万ぐらいだったような…。いい経験です(笑)。
10年後のベーシック
I:うちに比べて吉村さんのところはベーシックな気がします。どうやってこのようなセレクトに行きついたんですか?
Y:僕のお店は、基本的には生地がよくて形がきれいなものが集まってるんだと思います。で、自分の洋服って10年前に買った物が今と大して変わってないんですよ。ある程度の生地の良いものを買えば破れないし壊れないしで、10年間変わらず着れるなって。たぶんそれって10年後もまた続いていくと思っていて。
I:うん、すごいわかります。
Y:だからといって、ザ・スタンダード的なものばっかやってても面白くないなっていうのもあって。だからちょっと面白みのある、自分のフィルターを通してのスタンダードっていうものををやりたいなっていうのが店の始まりだったんです。
I:自分を通さないとね。やってられませんよね。お客さんも自分に集まってるところはあると思う。
Y:そう。だから一明さんがおっしゃっていた価格とモノのバランスというのも含めて、10年後でも着れる商品というのを集めたいなと思ってやってますね。
— 吉村さんのお店はファクトリーブランドが多い印象です。
Y:基本的に僕はファクトリーブランドが好きなんですよ。やっぱりモノの作りが良いですから。おまけに安いです。最近仕入れたスペインのエロセギっていう帽子ブランドもそう。値段は7000円なんですけど作りがすごいしっかりしていて。それはユニセックスと記載がありながら、ほぼ女性しか頭入らないんですけど(笑)。
I:海外のファクトリーブランドは意外と安いですよね。
Y:それと自分が自信を持って提案できるならネームバリューは特に必要ないかなって。あるに越したことはないけど無理やり入れるのもね。自分自身が楽しんでやらなきゃここに来る意味はないでしょうし。
I:三階まで上がってくる意味ですね?(笑)
Y:しかも看板もなし。階段を上がる勇気とドアを開ける勇気(笑)。
— 今日互いのショップに足を運んでみてどうでしたか?
Y:そうですね。レディースのバイヤーを元やられていたということで、僕もレディースの畑にずっといたので、やっているものとかことは違っても近いものはあるのかなって。女性を気遣って商品選びをしているのは似てる、親和性を感じましたね。
I:吉村さんところは、ネットではメンズ寄りなのかなーと思ってたんですけど、意外にそんなことはなく。意外とうちと似た、というかかなり近い提案をされていましたね。
Y:うん(笑)。
I:僕はバイヤーを始めてたとき意味がわからなかったんですよ。もう何を買い付ければいいのかさっぱりわからなくて。で、3年くらい経ってようやく見えてきた感じがします。デコルテを意識したものだったり、脇とかカットとか。女性はこっちの方が若く見えるとか綺麗に見えるとか細く見えるとか。
Y:レディースも面白いですよね。
I:単純に着れる服が多いからなんでしょうね。ワンピースもスカートも男性は着れない。アイテムとして女子なら許される。男子だったら裸の大将だけど、女性は顔になる。あるじゃないですか、タンクトップで短パンの女性。でも男子が着たら裸の大将になる。許されることが多いんですよ、女性の方が。そこに面白みがある。
Y:お互い、2店舗目はレディースにかなり寄ったショップやることになりそうですね(笑)。
— 楽しみにしてます。では最後に、恥ずかしがり屋のお二方、並んだツーショットでもどうです?
Y、I:いやー、大丈夫っす。(笑)
おわり
sunday people
住所:東京都渋谷区西原3-18-4-3A
電話:03-5738-8042
時間:15:00~20:00(火&金&土&日&祝)
定休日:月&水&木