FEATURE
「靴のプロ」に聞く!新社会人にふさわしい革靴選びとは
入社シーズン。学生時代の私服スタイルから、スーツへとシフトチェンジする時期ですね。そんな中で、イマイチ何が正解なのかわかりにくいのが革靴。就活時に履いた靴がよくないのはなんとなく分かるけど、いざ選ぶとなると不安になってしまったり。
今回はそんなお悩みを解決すべく、カジュアル・フォーマル問わず幅広く靴を手がけているブランド『alfredoBANNISTER(アルフレッド・バニスター)』代官山店の中條さんにインタビュー。一足目にふさわしい革靴から「新社会人は靴を何足持つべきか?」というありがちな疑問、さらに新社会人のみならず現役のビジネスマンまで気になる革靴のお手入れの仕方まで聞いてきました。
靴は一番のビジネスパートナー
− まず、靴をしっかり選ぶことがなぜ重要なんでしょうか?
靴はジャケットのように途中で脱ぐことができないですからね。そのぶん付き合いも長くなりますし、身体に合うものを慎重に選びたいですよね。もちろん見た目も大事ですが、靴は体全体を支えるものですから、機能性はもっと重要。特に履き心地は実際に履いてみないと分からない部分も多いので、やはり靴選びはないがしろにできません。
− そういった点を踏まえて、アルフレッドバニスターならではの魅力を教えてください。
日本人の足に合わせて靴を作っているので、履き心地が良いんです。 あと、シューズをメインで27年間やっているブランドということもあり、靴の造りの良さにはやはり自信があります。
新社会人が一足目に買うべき革靴とは?
− まず、新社会人は革靴を何足持っておくべきですか?
できれば三足買って日ごとにローテーションしてもらいたいですが、いきなりそれだけ買うのもハードルが高いですよね。なので、最低でも二足持っておいて、必要に応じて買い足していくのが現実的だと思います。
− 一足目の革靴はどのような点に気をつけて選べばいいでしょうか?
使いやすさ、特に無難さは意識するのがいいと思います。そういう点では、一番”フォーマルでベーシック”と言われている黒の内羽根式ストレートチップ(※1)(※2)がオススメです。上司から怒られることがなく、さらにこれから増えていくであろう冠婚葬祭にも履いていけますしね。
今はナロー(細身)なスーツが主流ですから、シルエットは細身なものが良いと思います。
(※1)内羽根式:靴紐を通す穴の開いた「羽根」という部位が靴の甲と合わさった仕様のもの。
(※2)ストレートチップ:トゥ(つま先)に一本の縫い目が入ったデザイン。
手染めストレートチップ ¥29,160(税込)
あと、仕事用の靴に限った話ではないですが、 自分の足型に合っているかを確認して履くのが何より大事だと思います。今はネットで買われる方も多いですが、サイズが合わなかったと後悔されている声もよく聞いています。Webで記載されている参考サイズは所詮参考でしかないですから、実際に試着してから購入していただくのがベストですね。
− 価格でいうと、最低でここまで出せば大丈夫、というラインはありますか?
作りやデザインもたくさんあるため、一概にいくらというのは難しいですが、そこはお客様のご要望に合ったものを相談しながら決めていただいたほうが満足度は高いと思います。
二足目はプレーントゥがオススメ!
− 二足目に買うとしたら、どのようなものが良いでしょうか?
よりスッキリとした印象のプレーントゥ(※3)がオススメですね。先ほどのストレートチップよりもややカジュアルな位置づけにはなりますが、ビジネススーツと合わせた時に浮いてしまうほどの違いはないです。ビジネス用として買うなら、とりあえずプレーントゥとストレートチップを持っておけば安心していいと思いますね。
(※3)プレーントゥ:トゥに切り替えや装飾のないデザイン
外羽根プレーントゥ ¥20,520(税込)
− 二足目も、色はやはり黒がオススメでしょうか?
そうですね。黒が一番フォーマルなので、最初のうちは間違いないです。その他の色は、二着目・三着目のスーツを買ったらその色に合わせて新しく買い足していくイメージでいいと思います。
− 二着目、三着目に選ばれることが多いネイビーやグレーのスーツに合わせるとしたら、どのカラーがいいでしょうか?
ダークブラウンですね。三、四年ほど経って会社に慣れてきたら、明るいキャメルカラーや、ブローグ(飾り穴)付きのストレートチップを選んでみても良さそうですね。
− 革靴を履いていると気になるのがやはり天候ですが、雨の日でも履ける革靴はありますか?
防水加工をかけたこちら(下の画像)のシューズはオススメです。デザインも内羽根式のストレートチップと、ベーシックで使いやすいですしね。ラバーやビニール素材を使った防水靴はどうしても”雨靴っぽさ”が強くなってしまいますが、うちのものはあくまでレザー素材。そこはかなりこだわっています。
透湿防水ストレートチップ ¥23,760(税込)
− 一足目、二足目にこれを買ってしまうのもアリでしょうか?
アリだと思います。特に営業をされる方は、急な天候にも対応できるようにこのような仕様の靴を買われますね。
できれば買っておきたい”プラスα”の品
− 革靴を購入する際、合わせて選んでおきたいものはありますか?
まずはベルトですね。素材や色味を革靴に合わせて選びましょう。例えば、きれい目のストレートチップに表革のベルトを合わせて、黒のスーツで纏めるようなイメージです。
あとは、小ぶりの携帯用シューホーン(靴べら)ですね。靴紐を解かずに足をグリグリ入れて履くと、踵がすぐダメになってしまうんです。ベストなのは毎回靴紐を緩めて履くことですが、状況に応じてシューホーンが使えるとよりスマートだと思いますよ。
− 確かに同素材のベルトやシューホーンは嗜みとして持っておきたいですね。あと、シューキーパーは買った方がいいとよく聞きます。
革をしっかり伸ばしたり靴の形を綺麗に保ってくれたりするので、できれば持っておきたいアイテムですね。特に靴のサイズごとに展開されている木製のものがオススメですが、価格が3,000〜18,000円ぐらいで、いずれも値が張ってしまうんです。もし手に入らないようであれば、最初のうちは丸めた新聞紙を詰めて通気性を良くしておくだけでもOKです。
長く履き続けるなら、シューケアは必須
− 次はお手入れのお話を聞ければと思います。そもそも、靴のお手入れってなぜ必要なのでしょうか?
革靴は、元をただせば牛という生き物。言わば、今ってミイラのような状態なんですよ。だから、しっかりケアして栄養を与えていかないとどんどん劣化していくんです。あと、新社会人に大切なのはやはり清潔感なので、傷があったりツヤが落ちていたりすると印象も良くないですよね。
− お手入れに最低限必要な物はなんでしょうか?
欠かせない”初心者セット”としてはステインクリーン(汚れ落とし)、革をしっかり保湿してあげるクリーム、後はクロスや艶出し用と研磨用のブラシですね。 革靴は使っているうちに脱色してしまうので、その際の色付け用にクリームタイプの靴墨も持っておくとなお良いです。
左)レザーリムーバー300ml ¥2,000、中左)デリケートクリーム60 ¥1,000、中央)アニリンクリーム ¥1,000、中右)R プロ・ホワイトブラシ ¥1,000、右)グローブクロス ¥500 ※全て税抜き価格
− お手入れはどれくらいの頻度でやるべきですか?
2週間に1回ですね。 汚れ落としからツヤ出しや色付けまでを全部をやるというよりは、傷がついた部分だけぼかしたり、革の保湿スプレーだけしてクロスで軽く拭いてあげたりと、随所随所でケアしていくイメージです。
靴の手入れって最初は「めんどくさい」と思われがちですけど、汚いものがきれいになっていく達成感が病みつきになってハマる方も多いんです。ぜひ試してみてください。
プロが教える、靴磨きの基礎
① まずは清潔な布で軽く汚れを拭き取る
② ①の布にステインクリーン(汚れ落とし)をつけ、丹念に磨く。
ポイント:今拭いているのはスリッポンタイプですが、紐靴だったらシューレースをしっかり外してくまなく磨いてあげることですね。羽根の内側は埃がたまりやすいんです。
あと、ステインクリーンは汚れを落とすだけでなく、前に塗ったクリームを落としてクリームのノリを良くする効果もあるので、僕はこの作業に一番時間をかけていますね。
③ クロスで磨き、水気を取る
④ 全体を乾いたブラシでブラッシングする
ポイント:クリームを塗る前に埃を落とすイメージでやってください。
⑤ クリームを適量とり、ブラシで全体に馴染ませる。
ポイント:クリームはブラシの先につけても大丈夫です。履きジワの部分は乾燥しやすい場所なので重点的に塗りましょう。量は厚塗りしすぎない方が自然で上品な艶感になるのでオススメですよ。
クリーニング後(左)とクリーニング前(右) 。ツヤの違いが一目で分かる。
中條 寿祐
アバハウスインターナショナルに入社して10年。自宅でも革靴とのコミュニケーションに余念がない。サッカーの他、靴のメンテナンスが趣味の一つ。曰く、「シューケア用品は、店頭にあるもなら全部家に揃っていますね。新商品も出たら毎回買っています」とのこと。青森県出身。
alfredoBANNISTER 代官山店
住所:東京都渋谷区猿楽町20-9
電話:03-5458-5010
営業:11:30-20:00