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わざわざ行きたい店の、わざわざ会いたい人。蔵前「WEEKENDER SHOP」のアレコレ
「All about life」をコンセプトに、知る人ぞ知るブランドの逸品や、実用的で末永く使える雑貨が並ぶ「WEEKENDER SHOP」。昨年のオープンにも関わらず、多くのリピーターを抱えているという話を聞けば、渋谷や中目黒といったセレクトショップの激戦区に構えるお店と想像してしまうが、場所は意外にも蔵前。年季の入った建築が並ぶ、隅田川沿いの下町だ。
聞けばこの蔵前、おしゃれなカフェが並ぶ谷中、根津、千駄木あたり(所謂、谷根千)に次いで、ジワジワと盛り上がりを見せるスポット。とはいえ、おしゃれといっても依然としてファッションの匂いはしない。では、なぜ蔵前にお店を開こうと思ったのか、一度訪れる前に知っておきたいことをオーナーの芹澤さんに聞いてきた。
オーナー・芹澤 伸介さん
静岡県生まれの37歳。2017年2月、台東区の蔵前に「WEEKENDER SHOP」をオープン。
—風情ある街並みに落ち着いたカフェが並び、蔵前って浅草とはまた違って雰囲気のいいところですね。
もともと問屋や職人の街でしたが、最近は「コーヒーの街」としても知られています。うちの正面にあるお店も、雑誌に載っている人気のコーヒー屋さんだったりして。最近は他にもおしゃれなお店が増えてきて、周りの職人さんや問屋さんの間でも喜んでいる方が多いですね。
—「コーヒーの街」。蔵前がそう呼ばれているのは初耳でした。地域の方との交流も結構ありますか?
そうですね。隣の資材屋さんはかなり歴史が長くて、使っているレジなんか大正時代のものらしいんですよ。斜め向かいの鞄職人さんも、曽曽曽祖父みたいなところからやっている100年以上の歴史があるお店。そんな中、うちが去年の2月にできたので、やっぱり気にかけてくれますね。みんなぶっきらぼうだけど優しい、チャキチャキの“江戸っ子”なんです。受け入れてもらえている気がして、とても嬉しいです。
—下町人情ってやつですね。個人商店をやっていく上では、そういった繋がりは心強そうです。
「WEEKENDER SHOP」ができるまで
—「WEEKENDER SHOP」を立ち上げるまでは何をされていたんですか?
ずっと輸入卸の企業にいました。「Maiden Company」っていう、ニットブランドの〈Andersen-Andersen(アンデルセン アンデルセン)〉とかを卸しているところです。そのあとは、雑貨やインテリアの輸入業界にも少し。それから2012年に自分で輸入卸会社を起こして、昨年の2月にここを始めた形ですね。
—小売店舗自体が初めてというのは意外です。業界に入るまではやっぱり服飾を学ばれていたんですか?
それが全然違うんですよ。カナダに留学して、向こうの大学でホスピタリティを学んでいました。卒業して、日本に帰る頃に何をしたいか考えたとき「やっぱり海外に携わるような仕事したい」と思いまして。もともと洋服が好きだったので、服飾や雑貨業界で海外に携わるにはどうすればいいか考えて、輸入卸業に辿り着きました。
—ファッションとは全く別のことを学ばれていたとは…。そこから服飾の輸入卸業社に入るってかなり珍しくありませんか?
面白いのが、入社したところは社長もその下の部長も服飾業界出身じゃなかったことですね。だから、洋服に携わってない人を会社に迎えることに対して躊躇するほうではなかったと思いますね。僕の場合は英語が話せるという理由で、すぐ採用してくれて、1、2ヶ月後ぐらいにはもう海外に行ってました。店舗からバイヤーになりたいと努力している人に比べたら相当ラッキーですよね。
念願の店舗は「単なる洋服屋にはしたくない」
—カナダでホスピタリティを学んでいたと聞きましたが、それは接客に通ずる部分もあるなと思っていて。学生の頃からいつか接客業をやるビジョンのようなものは描かれていたんですか?
お店をやりたいという思いはありましたが、接客をしたいとは思っていませんでした。小学生の頃からの夢が料理人と社長になることだったんです(笑)。それで、僕コックでもあるんです。それで会社を立ち上げて、自分のお店も持っているじゃないですか。だから両方とも叶えていて。
—コックでもある!?ちょっと待ってください、このお店をやりながらコックとしても働いているということですか?
そうですね。今でも休みの日は、夕方から近くのイタリアンレストランで厨房をやっています。もう10年前くらいからですね。
—なるほど。料理人としての活動もしつつ、夢だった自分の会社とお店を立ち上げられたんですね。ところで、「WEEKENDER SHOP」という店名の由来はなんでしょうか?
「Week End」って週末って意味じゃないですか。だから、お客さんに「週末しかやってないんですか?」ってすごく聞かれるんですよ。でも、月曜日以外は開店しているからそういう意味ではなくて、休日とか週末って楽しくてワクワクするじゃないですか。そういう気持ちになれるお店にしたいなって。「Weekender」はもともと旅行者という意味なんですが、週末の休みの日のようなワクワクした気持ちを提供する人、という造語として店名に採用しました。
—たしかに行く前日からワクワクして仕方ない“休日”のようなお店ってありますよね。そういったお店を作り上げていくにあたって、セレクトへのこだわりはありますか?
うちのコンセプトは「All about life」なんです。これは生活に必要なモノで、“いいもの”があれば洋服以外も並べるという意味。だから生活雑貨もセレクトしています。
今の洋服ってもうどれもおしゃれなんですよね。だから、うちが考える“いいもの”はデザインだけでなく、その先にある気持ちいい着心地や、長く着れる素材使いまで考えられているものをセレクトしています。それは生活雑貨に関しても同じですね。やっぱりデザインだけで買うと結局ただの置物になっちゃいますから。単なる洋服屋にはしたくないって思っていて。
販売・アパレル一本でなかったことの強み
—商品を売るにあたって、力を入れている部分はありますか?
小売に関してはまだまだ新米なので、学びながらやっているところはありますが、気をつけているのは丁寧で礼儀正しい接客ですね。この広さなので、できるだけ声をかけて接客をしようとしています。それに、販売員の方が始めた小売店舗とはちょっと違う接客もできるのではないかとも思っています。
—販売員出身とはちょっと違う接客というのは?
洋服が輸入されてから、ここに並ぶまでの流れを知っているところですね。絶対そういった話するわけじゃなくても、興味を持ってくれた方に対しては、「こんな人がこういう流れで洋服を作っていて、こういう経緯でバイイングしてきたんですよ」って、一連の流れを汲んだ会話もできるんですよね。実際、そういった話に皆さん興味持ってくれますし。
—それは確かに輸入卸業界にいたからこその強みですね。ちなみに、僕自身が雑貨業界のことをよく知らなくて恐縮なのですが、雑貨にもアパレル業界のようなトレンドはあるんですか?
多少はあると思いますね。ただ洋服に比べると全然ないです。だからそれぞれのメーカーが在庫を持ちやすいんですよね。洋服は生鮮的な側面があるから、シーズンを過ぎたら価値は大きく下がりますが、雑貨は何年も同じものを売り続けられる。雑貨と洋服業界って同じように見えて全然流れが違うんですよ。
そういった良い面もありつつ、雑貨と洋服の異なる流れを知っておかないとうまくいかないのは事実です。実際に雑貨も洋服も取り扱っていても、途中から雑貨の割合が減ってきて、いつの間にか洋服だけのお店になっていうケースもありますからね。
(近所でオススメのカフェは『COFEE NOVA(コフィノワ)』。コーヒーはもちろん、浅草橋の名店『ペリカン』の食パンを使ったフードも絶品)
—どちらの業界で経験を積んでいるからこそ、「WEEKENDER SHOP」は上手く両立できているんですね。
そうですね。そういう意味では今まで僕がやっていたことの集大成かもしれません。
—では、今後の展望を教えてください。
目下の目標は僕の接客力をもっとあげることですね(笑)。それに付随して、軸としてぶらさずやっていきたいのは、長く使えたり、着心地が良かったりといった“良いモノ”を見つけて、お客様に紹介すること。
あとは、東京の東側に店舗を増やしたいですね。むやみやたらと増やすわけではなくても、東のセレクトショップといえばウィークエンダーショップ、と言ってもらえるまでにはなりたいです。僕がここのお店でやりたいことは3割ほどしかできていないので、これからも挑戦していきたいですね。
デザイナーの人柄が出ているニット
「洋服が輸入されてから、ここに並ぶまでの流れを知っているから、販売員出身の方々とはまた違う接客ができる」という芹澤さん。同店に並ぶ、「服」「雑貨」の中から、一点ずつオススメのモノをピックアップしてもらい、その一味違う接客を受けてきた。
ピックアップしたのは、デザイナーが元同僚という<comm. arch.(コムアーチ)>のニット。セントラル・セント・マーチンズ(※1)を首席で卒業したエリートが作る逸品だ。
—このブランドの魅力はどんなところですか?
何といってもデザイナーの人柄ですね。めちゃくちゃ優しいんです。ニットってデザイナーや職人の気持ちとか人柄とかが作りに現れるものだと思っていて、まさにその優しい人柄がこのニットからは伝わってくる。実際に、1度着たら病みつきになるくらい暖かくて軽く、着心地がいいんです。トレンドに左右されないものをストイックに手がけています。
中には、数少ないハイブランドしか依頼を引き受けない、東北地方の山奥で工房を開く職人さんが製作したニットもあって。でもなぜ、そんな凄腕の職人さんがまだまだ小規模なコムアーチの仕事を引き受けたのかというと、袖を通せばその真意みたいなのが分かるんですよね。それだけモノ作りに対して、熱い気持ちを持ったデザイナーが手掛けるブランドなんです。
※2 セントラル・セント・マーチンズ:ロンドン芸術大学のカレッジの一つ。ジョン・ガリアーノやアレキサンダー・マックイーンなど、世界的なデザイナーを数多く排出する名門中の名門。
「うちの服は、ぜひこれで洗って欲しい」
<GREEN MOTION(グリーン モーション)>の「ECO LAUNDRY LIQUID」。破損した海洋タンカーから漏れたオイルを、自然に戻す研究から生まれた洗剤。
—おすすめはどんなところでしょうか?
自然由来のものを100パーセント使っていて、身体にいいのはもちろん、特に凄いのが、1回の洗濯を5プッシュ分でまかなえること。つまり、ティースプーン1杯分程度で十分に洗濯できるくらい、洗浄力が高いんです。その証拠に、洗濯機でこれを使っているところを見ると、泡が立っていないんですね。これは洗浄成分が上に上がってこないで、無駄なく水と混ざり合っているということ。洗浄力が低いとこうはならないですから。
一本2600円と割高に見えますけど、100回使えるので、結果的にコストはとても安いです。しかも、ウールやカシミヤといったドライマークがついている衣料も洗えるんですよ。すすぎも一回で大丈夫です。
他にも、抗菌作用があるから雨の日でも匂いがつきにくいとか、柔軟剤がいらないくらいふんわり仕上がったりと、伝えきれないくらい良いところがあって。肌にも洋服にも優しいから、うちの洋服を洗う時にもこれを使って長持ちさせて欲しいな、と思って選びましたね。やっぱり着た後まで満足して欲しいですから。
WEEKENDER SHOP
住所: 〒111-0051 東京都台東区蔵前3丁目18−7
営業時間: 11:00-20:00
定休日: 月曜日
TEL: 03-5825-4609