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FEATURE

こんなチノ、待ってました! ファッションの重鎮が別注した、ウディ・アレンが穿いていたような2プリーツチノ(ウォッチポケット付きです)。

ウディ・アレンといえば、映画監督である一方、ファッションアイコンとして取り上げられることもあり、彼のナードなスタイルは一度は見たことがあるはず。べっ甲のメガネにツイードジャケット、チェックのシャツなどなど、彼を象徴するアイテムは数あれど、中でもファッション好きが憧憬の眼差しを向けてきたのが2プリーツのチノパンです。そんな中、普段から取材でお世話になっている三軒茶屋の老舗セレクトショップ「SEPTIS」の玉木さんから見逃せない情報が。

「ウディ・アレンが映画『アニー・ホール』ではいていた2プリーツのダボダボしたチノパンを作りました(*^^)v」。

こ、こ、これは、見逃せない(キュートな顔文字が一旦さておき) ! というわけで、三軒茶屋の「SEPTIS」へGO。気になる誕生秘話からチノパンの詳細、裾上げのコツなど聞いてきました。

実はあまり好きじゃなかった、ウディ・アレン。

ーのっけから変な質問ですが、ウディ・アレンは昔からお好きなんですか?

最初はあんまり好きじゃなかった(笑)。ああいう軟弱なタイプって、全然興味なかったんです。どちらかというと、スティーブ・マックイーンとかポール・ニューマン、ロバート・デニーロのほうを向いていたので。

玉木朗さん
老舗のセレクトショップ、三軒茶屋「SEPTIS」のオーナー。高校生の頃にファッション目覚めて以来、アパレル一筋。1970年代にはチノパンが普及していく様をその目で見ていた。1955年京都市生まれ。

ー「軟弱」の逆を行ってたわけですね。でも今回のバーンストーマーとの共作は、映画『アニー・ホール』でウディ・アレンが穿いていたチノパンが元ネタです。1978年の公開当時はご覧にならなかったんですか?

いや、観た。観たんだけど、周りに遅れを取っていたのが正直なところです(笑)。映画がアメリカで出来たのが77年で、日本で公開されたのが翌年の78年でしょ? で、77年っていうと、ようやく銀座の『シップス』がオープンした年なんです。それまではインポートのカジュアルってのは、俺も含めて、アメリカの西海岸の方しか向いてなかった。けど、東のテイストをいきなり持ってきて、「どうだ!」って言ったのが彼らだった。

ー『アニー・ホール』と『シップス』がタイミングよく合致したわけですね。

そう。それでやっぱりアンテナの高い連中ってのは早いから、『アニー・ホール』をすぐ観てくるわけ。で、「ウディ・アレンがかっこいいぞ!」なんて言って、2プリーツのチノパンを横で穿いてるわけよ。でも俺は、「え? 2プリーツ? マジ? いやだな〜」と思ってしばらくグズグズしてたんだよね。

ー遅れを取ったと(笑)。

おもいっきりね。だってそれまではさ、〈ファーラー〉のニットパンツとか、〈リーバイス〉のベルボトムを穿いてた人間がだよ? いきなり腰回りがゆるっとしちゃうわけよ。そりゃ違和感だよね。

ーでも映画はしっかり観たんですよね。

そのあと、こっそりね(笑)。その時、ようやく「あ、そうかそうか。こういう風になってるわけか」と納得がいって、そこらへんで買うのもいまさら感があるからアメリカに出張に行った時にラルフローレンでこっそり買った。そんな思い出がありますね(笑)

ーなんというか、玉木さんの負けず嫌いが垣間見えるチャーミングなエピソードです(笑)。

出張から帰ったあとは「いかにも前から持ってました」って感じで穿いてました。その時に買ったチノパンが、彼がいま穿いているやつです(笑)。

ーおお、しっかり受け継がれているんですね。

今回、別注するにあたってタンスから引っ張り出してきたんだけど、白木くんにあげました。なんでかって、もうキツくて入らないから(笑)。

SEPTIS玉木氏とお店を切り盛りする若きエース白木氏の足元。玉木氏がアメリカのラルフローレンで“こっそり”買ってきたポロのチノパンを堂々と穿きこなしている(ちなみに32インチ)。



生地はぶっとく、色は薄く。

ー約40年経って、なぜ今、『アニー・ホール』でウディ・アレン演じるアルヴィー・シンガーが穿いていたチノパンを〈バーンストーマー〉に別注しようと思ったのですか?

ここ数年、ワイドパンツという一つのジャンルが潮流になったじゃないですか。そんな中、うちも含めてバーンストーマーさんも細めのパンツを中心に扱ってきた。ただやっぱり、ここに手をつけなきゃなっていう思いはあったんです。そこで「チノはチノでもワイドなものは?」「うちに合ったアメリカンテイストのワイドパンツって?」って考えた時に「あ、あれだ!」って急に思い出したのがアニー・ホールのウディ・アレンだったわけ。それで、海老根さんがうちのお店にちょうどお見えになった時に提案したのがきっかけでした。

ーなるほど。そこで、白木さんがいま穿いているポロのチノパンを元ネタとして見せるわけですね。

そう。「こういうのをやらない?」って言ったら「あ〜知ってる知ってる。これ、いいっすね〜!一度作ったらたしかにかっこいいかもしれない」ってね。それで二人で盛り上がっちゃって、作っていくことになったんです。

ーその話をされたのはいつ頃だったんですか?

昨年の春ぐらいかな。結局コロナだなんだといって、いろんな事が停滞していた時期です。話を先取りすると、サンプルがあがってきたのが11月頃。発売は12月末を予定したのですが、製作をお願いしていた工場さんが抗菌コートを作っているから「とてもこういうものを縫っている状態じゃない」と言われた時もありましたね。こんな状況だし、仕方ないよね。

ー僕らが見えないところで大変な状況になっているのですね。玉木さん自身も禍にあって、なにか動き出さなきゃという思いがあったんですか?

それはありましたね。だから、もうすでに単なる太いパンツってのは世の中にたくさんあるから、それを超えるものを作ろうってことでバーンストーマーさんに依頼しました。ただぶっといだけではなくて、しっかりアメリカンテイストが盛り込まれていて、おまけに従来のアメカジのアイテムともちゃんと合うパンツをね。自分でも久しぶりにそういうものを穿きたい気分でしたから。

ー実際にはどのように進められていったんですか?

バーンストーマーさんには実はすでに「マッカッサー2」という名品があって、それをベースに進めていきました。基本的には腰回りのディテールはそのまま残して、型紙も変えなくていいですと。その下のシルエットだけ、ぶっとく、という具合です。ただ、生地の色は変えようと。

BARNSTORMER/SEPTIS別注 ALVY CHINO ¥ 18,480(税込)

バーンストーマーさんのチノパンのカーキはちょっと濃いカーキなんですよ。どちらかというと、イギリス軍の軍服に使われていたブリティッシュカーキ。反対にアメリカのチノパンの色というのは昔はこうだったの(パンツを指差しながら)。それよりも薄いカーキ。で、これはね、どっちが良いという話ではないんです。ただアメリカのチノといえばやっぱりこっち。もちろんアニー・ホールでウディ・アレンが穿いていたチノもこっち。そこはこだわりましたね。

ーやりとりとしてはスムーズに進んでいったんですね。やはり、これまで数々の別注アイテムを一緒に作ってきたからでしょうか。

うん、そう。あのね、こっちが描いているイメージをサッと形にしてくれるってのはね、別注で一番大変なところなのよ。作った側からすれば「言われた通りやってるんじゃないですか!」というのはよくある話で、こっちはこっちで「なんで伝わらないかな」となる(笑)。その意味で海老根さんとはすごくやりやすいですね。サンプルも一回でOKを出しました。

ーたったの一回、ですか。

もしあるとすれば、どのパンツを指してるのか途中わからなくなってしまったことかな。

ーというと?

バーンストーマーさんには定番の2プリーツと、「マッカッサー2」のプリーツ、あと今回の2プリーツといろいろあるわけ。で、当然やりとりの中で「2プリーツ」という言葉が出てくるんだけど、話してるうちに「え? どの2プリーツ?」となるんだよね。「いや、こないだの」って言っても伝わらない。そうなると、説明の説明が必要になる(笑)。もうややこしい!ということで、途中から「アルヴィーチノ」と呼ぶようになりました。「アルヴィー」とはもちろん、『アニー・ホール』でウディ・アレン演じるアルヴィー・シンガーの「アルヴィー」ね。

ーまさかそんなやりとりから名付けられていたとは(笑)。貴重な誕生秘話です。


ウォッチポケットがあるのかないのか、それが全て。

ーすでにここまでで貴重なエピソード満載ですが、ここからはアルヴィーチノのディテールを覗かせてください。まずはやはり…?

ウォッチポケットだよね。あれを作るのなら、すごく大事なファクターだと思う。

ー世の中には『アニー・ホール』でウディ・アレンが穿いていたチノパンを理想とする人がたくさんいて、他のブランドのものでシルエット等は理想に近いんだけど肝心のウォッチポケットがない、と嘆いている方もいらっしゃいました。

うん、そう。使う使わないは別にして、これが存在しているかしていないか。それが全てです。ウディ・アレンみたいにシャツをタックインして、ベルトして、これを見せるっていう。それ抜きにしても、アイキャッチになるしね。例えば、ヘインズのTシャツを一枚突っ込んでも、これってかっこいいはずなんですよ。その他のものだと、もしかしたらベルトを忘れた人みたいに映ってしまうかもしれない。ウォッチポケットとボタン付きのタブがとても大事なんです。

ーなるほど。〈バーンストーマー〉といえば、畳んだ時はカーブしているように、立った時は真っ直ぐと見える「S字カーブ」が代名詞ですが、やはり健在ですか?

もちろん。脚のラインに沿わせるためにガセットクロッチといって、股部分に別布を入れています。元々は平面の生地なんだけど、そうすることで股部分から太腿に向かって癖をつけることができる。結果、お尻のたるみが引っ張られてトップから踵のところまで生地がストンと落ちる。これ、バーンストーマーにしかできないんですよ。ここのパンツのシルエットの綺麗さの秘密は、ここにあります。

腰回りにも別布があてられている。これも脚のラインに沿うようにするためのバーンストーマーならではの仕掛け。

ーワイドなシルエットでも、変わらず美しく見えるんですか?

そうです。美しいといえば、裏の仕様もそう。決して表には見えないんだけど、スーツを縫う工場で作っているから裏の始末がとにかく綺麗。「ここまでやるのね」ってぐらいに、丁寧に、全部やってくれているわけ。そこらへんがある意味、ラフさが売りのインポートにはない部分かな。「良い仕事してますね」っていうのが内側を見てもわかる。バーンストーマーさんの製品のすごいところだと思います。

ーいい話ですね。裏地を眺めているだけでお酒が飲めそうです。

あ、でも一つあった。

左がサンプル。右が店頭に並べられた商品。

そうそう。サンプルの話で、ここだけは変更してと言ったポイントが一つありました。ほら、ここの脇(サイド)のステッチ。ここのデコボコ感がね、俺のイメージと違うわけ。だからここの幅を変えてもらったの。サンプルでは2〜3mmくらいだったんだけど、そこを5mmに。そうすると、ここのアタリの出方が変わってくるんです。納品の段階で一度水を通してもらっているからすでにアタリが出てるんだけど、着込んでいくともっといい表情になってきます。この面(ツラ)こそ作りたかったんです。ウディ・アレンって、あの人自体のキャラがそうなんだけど、着ているもの含めてどこか気の抜けたラフさがあるでしょ? あれを再現したかった。だから、こういう細かい部分にもこだわってみました。



裾は4.5cmのダブルが新鮮。

ー自分も含めて待ちに待った方も多いチノパンですから、裾の処理を正確にしたい!という方も多いはずです。理想の裾の処理を教えていただけますか。

これに限っては、ダブルの仕様で4.5cm幅をおすすめしています。というのも、そこの幅は何センチが適当かって、裾幅に寄るんです。例えば裾の細いパンツに4.5cmのダブルを作ったら、極端に大きく見えてしまう。服飾の教科書っぽいものにはね、「3.5cmぐらいが適当」みたいに書かれているんだけど、アルヴィーチノは4.5cmがバランス良く見えるんじゃない?と考えています。

ーダブルの4.5cm。肝に銘じます。ただ、『アニー・ホール』でのウディ・アレンはシングルでしたよね?

そうですね。もちろんダブルの4.5cmにしなさいという意味ではないんだけど、これに関してはアリという提案ですね。そうすると、今まで穿いていたものとは明らかに違うパンツがワードローブに増えた感ってのは出ると思うのよね。ダブルにしてパンツを穿くっていうのをやったことのない人のほうが多いはずなんで。それも新鮮に思えるんじゃないかな?

ーなるほど。実際、やってみていただいてもいいですか(買います)。

もちろん。

ちょうど靴を履かないで立ったとき、床につくかつかないかぐらいの丈にすると、いいと思います。これなら靴を履いたときにブレイクができて、ちょうどいい形になってくれる。

ーせっかくの綺麗なシルエットも失われないということですね。

その通り。あんまり長くすると生地がクシャクシャになって、綺麗なシルエットが出ないんです。だからこれぐらいの丈の長さが、パンツを生かせる。お尻のトップのところからストーンと落ちてるシルエットは見せた方が絶対得だから。…よし、これぐらいでOKだと思います。

編集部・溝口による試着。180cm70kgでXXLを着用。ウエスト周りに余裕があるものの生地がもたついていない。

ーなるほど。ありがとうございます。ぜひ、それでいきましょう。

うん。じゃ、ピン打ちます。



「ちょっと高いな」と言って、横にどけられるのは悔しいからね

ー最後に、このチノパンについていち消費者として思ったのは、「別注なのに、よくぞ2万円に抑えてくれました!」ってことです。やはり、値段設定についても意識されたんですか?

まぁ、やっぱりバーンストーマーさんが考えている価格帯のなかに押し込めておかないとというのはありました。「ちょっと高いな」と言って、横にどけられるのが悔しいからね(笑)。

ーたしかにもったいないです。

たくさんの人に穿いてほしいからね。そのためには、まず入り口を広く取っておかないと。

だから、「別注だから高いんです」というのはあくまで供給側の理屈だと思うんですよ。「これ大変だったんだから!」というのも供給側の理屈。大変なんだろうけど、欲しがってもらわなければ一緒なわけで。ただ、本当はもうちょっと高いほうがよかったのかもしれないんだけど(笑)。もしかしたら2.5万円だったら横にどけられていたかもしれない。

ー僕は構わず買っているかもしれません(笑)。

ありがとうございます(笑)。ただね、やっぱり多くの人に穿いてほしいから。もう発売して2週間くらいが経って、すでに好評です。サイズはSからXXLまでの広いレンジですが、どれも均等に動いている。いろんな人に買っていただいている実感があります。

ーどんなお客さんが買っていかれるんですか?

元から来てくれているお客様はもちろん、『アニー・ホール』を観てインスパイアされた方もいらっしゃいます。「こんなの待ってました!」とか「これ、ドンズバです」とか。ありがたいお言葉をいただいてますね。

ー本日拝見して、まさに自分もそんな印象です。

あとは明らかに業界の方だよね、って方もいらっしゃいます。だって、服装が業界のそれだもの(笑)。その方からは「これは2本ほしい!」という声をいただきました。そういう声を聞くとね、やっぱりね、あぁやってよかったなって思いますね。

ジャケット/SOUTHWICK、シャツ/IKE BEHAR、パンツ/BARN STORMER×SEPTIS、シューズ/Spring Court、ベルト/私物

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