FEATURE
あのお店のプレイリスト|仲町台Euphonica vol.8「秋の夜長を聴き通す」

国内外から上質なアイテムをセレクトする仲町台町の“洋品店”『Euphonica』のオーナー井本さんが、その時々の気分に合わせてプレイリストを公開。90~00年代の音楽体験を語ってもらった際には同氏のマニアックな一面も垣間見えましたが、はたしていま興味のある音楽は? vol.8は「秋の夜長を聴き通す」。

Euphonicaオーナー/井本征志
「とうに夏は過ぎましたが、湿度の違いのせいか、秋になると音楽の聴こえ方が変わってきますよね。そんな秋の夕方から夜、室内で楽しめるような曲をまとめてみました。『夜長』と謳ってみたものの、実はそこまでプレイリストの再生時間は長くありませんが…」
1. Nina Simone/Little Girl Blue
「まずはニーナ・シモンのデビュー盤から。優しいピアノに、このダイレクトに訴えかける声。まだ若い時期なのでそこまで響く迫力はないものの、それが却ってこの曲にはよく合っています」
2. JIDA feat.Rachel Lim/Autumn Breeze
「ダンサブルないわゆるK-POPって苦手なんですけど、もちろん韓国の音楽はそれだけじゃないわけです。次から次へと素敵なミュージシャンが出てきていて、目が離せません。とはいえ詳しい情報がなかなか出てこないので、そこが歯痒いですね」
3. Blossom Dearie,Pete Morgan/Baby, You’re My Kind
「ブロッサム・ディアリーはとにかくキュート。ジャズのある種の重さや暗さ、ワルな部分をすっかり削ぎ落して、ひたすら可愛らしい音楽にしてしまう人です。むしろ、ジャズというよりポップスの人として評価すべきかも知れません」
4. Chet Baker/It’s Always You
「一方こちらはドラッグ漬けの退廃的ジャズマン。でもここまで甘い声のジャズヴォーカリストはなかなかいません。トランペッターとしても有名ですが、やっぱり歌ですねこの人は」
5. Lesley Duncan/Heaven Knows
「この企画で何度か登場、レスリー・ダンカン。華やかさやスター性はないものの、素敵な音楽を多く遺してくれた人です」
6. サニーデイ・サービス/枯れ葉
「サニーデイの4枚目のアルバム『Sunny Day Survice』は、全体を通して冷たくて静かな、秋から冬の匂いに満ちています。そのなかから秋深まる一曲を」
7. Fairground Attraction/Moon on the Rain
「個人的に、毎年、夏が終わって空気が秋めいてくると聴きたくなってくるのがフェアグラウンド・アトラクションです。超有名な『Perfect』だけでなく、ほかにも佳曲がいくつもあるんですよ」
8. The Mills Brothers/Till Then
「なんとレコードデビューしたのが1931年。男性コーラスグループの草分け的存在である、ミルス・ブラザーズ。この曲は50年代ですかね。しかしいまの耳でも古臭く陳腐なものに聴こえないのはさすがです」
9. A Tribe Called Quest/Jazz
「共感してもらえるかどうか自信がないんですけど、ATCQの音楽って空気が冷たくて、秋冬っぽくありません? とくにこの曲」
10. Billie Holiday/Crazy He Call Me
「ビリー・ホリデイの歌って、聴くと感覚的に『うわ!すご!』と納得させられてしまいますね。曲の中で歌が浮かないというか、歌の中に曲を収めてしまうというか…。どういう理屈かはさっぱりわかりません」
11. The Ink Spots/ I Don’t Want to Set The World On Fire
「1930~40年代に人気を博したインク・スポッツ。大衆音楽の歴史に偉大な足跡を残しました。よく曲の途中で語りを入れてくるのに最初は違和感があったものの、慣れてくるとそれが癖になりますね」
12. Rickie Lee Jones/Living It Up
「なんとなくシンプルで明るい感じのシンガーソングライターというイメージの強いリッキー・リー・ジョーンズ、実際は全然そんなことないんです。酸いも甘いも知る、大人の音楽ですよ。なかでも空気の冷たい『パイレーツ』から、変則的な一曲を」
13. The New Christy Minstrels/Today
「小学校で習った『グリーングリーン』の原曲でも知られるニュー・クリスティ・ミンストレルズは、1960年代に活躍した男女混成の10人組フォークソンググループです。昨今のリズム偏重ブームに疲れてきて、最近はこういう年齢層の高い音楽をよく聴いています」
14. Cornelius Brothers & Sister Rose /Too Late to Turn Back Now
「フロリダ出身の兄妹グループであるコーネリアスブラザーズ&シスターローズの代表曲。ソウルミュージック特有のエネルギッシュな汗臭さ(それはそれで魅力なんですけどね)はなく、すっと馴染むようなポップス感あふれる佳曲です」
15. Vashti Bunyan/Timothy Grub
「浮世離れした、ファンタジーそのものの音楽を囁くように奏でるヴァシュティ・バニヤン。この曲も御伽噺のような不思議な世界を描いています」
16. Belle and Sebastian/She’s Losing It
「ベルセバが大人気だった90年代後半、個人的にはメロディの弱さが気になってそこまでハマらなかったんですけど、この『She’s Losing It』だけはとても好きでした。涼しげで、インディーギターポップの魅力がぎゅっと詰まった、瑞々しい一曲です」
17. Bo Kaspers Orkester/Bröllopsresan
「本国スウェーデンはじめ北欧では高い人気を誇るブー・カスペルス・オルケステル。長いキャリアのなかで多くのヒット作を世に送り出していますが、こうした地味めのもまたいいんですよ」
18. Meshell Ndegeocello/Beautiful
「この曲が収められている名盤『BITTER』全体に言えることながら、実際の音以上に静かで、そして内省的です。独りで聴きたい音楽」
19. Teddy Pendergrass/The Whole Town’s Laughing at Me
「渋みをじっくり味わった後は、一転してとろけるような極甘ソウルでいきましょう。テディの肉感豊かな歌声のみならず、コーラスからホーンの使い方に至るまで外連味なくエモーショナルで、米米CLUBが好きな人にもお薦めの一曲です」
20. テイトウワ/甘い生活
「〆は、テイトウワのソロデビューアルバムから、野宮真貴を起用した不朽の名曲を。それではおやすみなさい」