FEATURE
ショップスタッフが買った『秋冬の洋服』と『買った理由』 #002 酒井浩平(LINKS)
気になる、ショップスタッフが私物で買ったもの。
洋服好き同士でよく交わされる、この会話。ただ、友達同士ですることはあっても、なかなかショップスタッフとこの会話をすることは少ないのではないでしょうか?
気になるけど、お店では聞きづらい『ショップスタッフが買ったもの』。でも、気になるんだから聞いてみよう。ということで、編集部が気になるショップスタッフに“この秋冬買ったもの”と“買った理由”を聞いてきました。第二回は、学芸大学セレクトショップLINKSのプレス・酒井さん。洋服の選び方の参考に、またはお勉強に、はたまたポストの参考に、どうぞご覧ください。
一目見て、カッコイイなと。
クセのあるアイテムでも上質さを損なわない。ありふれたアイテムに食傷気味な人がお店に行くと毎回欲しいアイテムが見つかってしまうLINKS。そのバイイングの7割をオーナーである半田さん、残りの僕らに近いところを酒井さんが担っているわけですが、私物として購入するモノはいかに?
「秋冬の一発目に買ったのはbagjackのベルトです。別注色のグレーもかなり良くて、思わず二色買いしちゃいました。それで次に買ったのが、このTONSUREの中綿ブルゾンですね。元マルジェラにいたメンズのデザイナーさんが2014年から始めたブランドで、今回から日本に代理店が入ってやらせてもらう機会が巡ってきて、それで展示会で一目見て、カッコイイなと。」
このジップの音がいい。
極わずかの店舗でしか手に入らなかったブランドを自店で取り扱う嬉しさ余って買ってしまったブルゾン。オーナー兼バイヤーの半田さんも買う予定らしく、すでに在庫僅少になっているのだとか。目の肥えた同店の2/2人の購買意欲を掻き立てたポイントは、実に業界人らしいものでした。
「ここの袖のユーティリティーポケットもそうですが、ベースはミリタリーのMA-1に近い感じですね。でも素材が上品でモードな雰囲気をしていて良いんです。あと何と言ってもこの長いririジップ。Lスライダーって言います。デザイナーの友達もあまり見たことがないと言っていて、単純にそれが気に入りました。スイスの高級ジップメーカーなんですけど、歯を確か全部磨いてるんですよ。なので、滑りがすごく良いってのと、他のジップと違って、(ギギッ)この音。この音がまた違って良いんですよね。」
洋服の一要素で、それほど気にしなくても良いポイントであるはずのジップが、目の肥えた人にとっては惹かれる一要素。ぱっと見の「カッコイイ」を醸成したのは、細かなディテールがあってこそです。“カッコイイ”を支えた他の一因も聞いてみました。
「中は中綿入りなので風なんか受け付けません。真冬でもかなりの防寒性が期待できます。あとこのパッチポケットの作りもすごい特徴的で、わざとこう余白というか、余裕を持たせたディテールになってるんです。上品な生地に面白さを与えてくれてますよね。後ろのほうもセンターから若干ずらしているのがユニークだなーと。」
「モードでもストリートでも使える綺麗な雰囲気のブルゾン」
情報も然り、モノが溢れる世の中で、ユニークなものを探すのは大変。ましてや、自分の個を披瀝するものとしての洋服であれば尚更のこと。そんな時、お店の人にとってのユニークポイントは頼り甲斐がありますね。もしスタイラーでこのアイテムが提案された場合、どんなポストがそこにあるのか、逆ポスト的に聞いてみました。
「もともとMA-1を持っているのですが、ミリタリーの流れもあってもう一着欲しいなと思ってたんです。これはポストするとすれば、“モードでもストリートでも使えそうな、綺麗な雰囲気のブルゾンを探してる”ですかね。」
ポストは違えど、実際に「おすすめのアウターありますか?そこまでこだわりはないです。イケてるやつならなんでもOK!」というユーザーの“ほしい”に提案してくれた「きれいな雰囲気のブルゾン」。最後に買いたてホヤホヤのTONSUREのブルゾンでスタイリングを組んでもらいました。着丈が難しいアイテムをはたしてどう着こなせば良いのやら。
「まぁうちとしては、ワイドパンツにタックインスタイルがハマるんじゃないですかね。他のお店さんよりも太めのパンツが多いので、まぁ合わせやすいというか、太めのパンツで提案したい、自分も着たいという感じですね。太めのパンツだと着丈が短いやつでも合わせやすいっていうのがありますから。」
それでは、また次回のショップスタッフが買った『秋の洋服』もお楽しみに。
Text.Shunsuke Mizoguchi