NEWS
#スタイラー編集部の愛用品。襤褸(ボロ)を纏って心は錦?
少し前から土曜日にはスタイラー編集部の愛用しているアウターや小物などをご紹介しているわけですが、たまには各々思い入れのアイテムをじっくり語っていこうということで、今回はライターの私が『野良着の襤褸 (ボロ、らんる)』について書きたいと思います。
本格的に服を好きになりだしたのは高校生の頃なのですが、当時はヴィンテージでテキスタイル、パッチワークにグッときたものを着ていました。そんな中、パッチワークの歴史を調べているうちに見つけたのが日本のヴィンテージである野良着の襤褸。テキスタイルも素敵だし、ヴィンテージ独特の経年変化で現れる雰囲気に一目惚れ。学生になったら何とかして手に入れたいと思っていたところ、数年前に友人が東北の蔵から買ってきてくれたのがこの明治時代の野良着です。
野良着とは明治から昭和初期ぐらいまで、主に農村での作業の際に着られていたいわば作業着。その中でも襤褸は作業の過程でほつれたり破れたりした箇所に、端切れを刺し子縫いでツギハギすることでで何年も捨てずに着用されてきた、まさに物質化したモッタイナイ精神です。
デザインを意図した訳ではなく、生活のために生まれたパッチワークなのに、なぜだか惹かれてしまうこの佇まい。絣や刺し子、藍染など、どれだけの手仕事がこの一着に注ぎ込まれたかと思うと、一層愛着が湧いてきます。海外の高級メゾンから、日本のストリートシーンまで数々のデザイナーが魅了され、デザインソースとしてきたのにも納得。
骨董品としての価値もある一着なのですが、あえてリアルクローズとして着ることで、この服の本当の価値が出るのかなと考えています。着て仕事をすることを目的に作られたものですし。いかり肩な海外の人が着る洋服と違い、撫で方気味な日本人に合うように作られているので、意外と着てもしっくりくるシルエットなんですよね。合わせ方としてはシャツの上に羽織って、書生みたいな気分に浸ったりしてます。
100年前の服を手にしてると思うだけでワクワクしてくるのですが、100年後に残すことも考えるともっと大切に着ていかねばと思う次第です。偏愛をつらつらと書きましたが、次は誰の愛用品が出てくるのでしょうか…来週もお楽しみに!
Text.Akira Ono