FASHION
もう行った?〈 PARIS オートクチュール展 世界に一つだけの服 〉が三菱一号館美術館にて開催中
「芸術は、着れる」という目を引くコピーが印象的な〈 PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服 〉は、現在大人気開催中。
本展覧会ではオートクチュールが始まった19世紀から1970年代以降現代に至るまで、100年近い歴史を概観することができます。2013年にパリ市庁舎にて開催されたガリエラ宮パリ市立モード美術館企画による展覧会を再編集したもの。
19世紀ガリエラ伯爵により作られたガリエラ美術館は、のべ10万点を超える洋服を抱える世界でも随一のファッションミュージアム。シャネル、クリスチャン・ディオール、バレンシアガ、イヴ・サン=ローランなど、ハイブランドが生み出してきた美しいシルエットの数々、刺繍・羽根細工・コサージュなど脈々と受け継がれる世界最高峰の職人技を駆使したドレスや小物、当時のデザイン画、写真など合わせておよそ130点が一堂に会しています。
館内を行ったり来たりして拝見した数多の展示の中でも殊に言及しておきたいドレスは、バレンシアガ引退前最後のオートクチュールである櫻色のドレス。本場フランスで、『ガリエラのモナリザ』と呼ばれるのも納得の麗しさを放っていました。
プレタポルテの台頭によりオートクチュールの立ち位置が揺らいだ転換期であった1960年代。天然の蚕から作られたという気の遠くなるような膨大な工程にこそ、時代の流れに抗ったバレンシアガ本人の爪痕がうかがえるのかもしれません。
ところで鑑賞/撮影をしていて気になったのが、一貫した展示室の暗さ。一番暗い部屋ではなんと50ルクス(!)で展示をしているのだとか(ガリエラ宮パリ市立モード美術館指定の数値)。これは浮世絵の展示などと同じ暗さだそう。それはもちろん、偏に数十年経過している数々のオートクチュールの状態を保つために尽きます。
ファストファッションが世の中に浸透して久しい昨今。パターンに頼らず、ひと針ひと針を縫い繋げて一着を作る、という果てしないクリエイティブに目を向けてみてはいかがでしょう。
ちなみに本展覧会の図録は、最近増刷も決定したという人気ぶり。図録にはめずらしい “電子版図録” もあるので、手のひらでオートクチュールを味わうのも違った発見があるかもしれませんね。電子版ならでは、拡大機能でよりディテールを堪能できるかも!
Text. Midori Tokioka