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FASHION

若者文化と共に新しい価値観の台頭 – 自由の次に力を手に入れた20世紀後半のファッション《連載:ファッションオタクのサーバエンジニアが見る女性とファッション・スタイルの文化史(4)》

ROBE読者の皆様こんにちは、ryokoです。連載第三回「やっぱり女は守られたい?それとも自立したい?ディオールとシャネルの関係で見る20世紀半ばのファッション」に続き、第四回は若者文化と共に新しい価値観の台頭した1960年代、70年代のファッションについて考えてみたいと思います。

若者文化と新しい価値観の台頭

第2次世界大戦を経て1960-70年代には当時高まりを見せていた公民権運動とともに、アメリカでウーマン・リブ運動が展開されます。イギリスでも階級社会が崩壊する中、「ユースクエイク(Youthquake)」と呼ばれる若者文化が台頭。ジーンズ、ミニスカート、ヒッピー・スタイルが流行しました。その中で女性解放の機運も高まり、女性たちはふたたび職場へ出ていくこととなります。

この時代においてココ・シャネルと同様、洋服のデザインだけでなく、女性や社会の意識に影響を与えたのがイヴ・サンローランです。1966年、プレタポルテ(高級既製服)のブランドである「イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ」を裕福でない若者の多いパリのセーヌ川左岸に開き、当時の若者、特に社会進出し始めた女性たちが手にできるようになりました。(リヴ・ゴーシュはフランス語で左岸という意味)また、イヴ・サンローランは男性の正装とされていたタキシードを女性の服として発表し、パンツルックの先駆けとなりました。

女性がパンツをはくことについて

女性がオフィスシーンを含め公の場所にて、日常にパンツをはくことは、現在では特にこれといって気にすることもない普通のことですし、それどころかレギンスのスタイルも定着していますが、この当時は私たちが想像する以上に抵抗のあったことのようです。

イヴ・サンローランの代表作 「smoking」

当時の高級レストランでは、パンツを着用していることはドレスコード違反となり、入店を断られたりしたそう。イヴ・サンローランの長年のパートナーだったピエール・ベルジェの著書でも一緒にいた女性がパンツを履いていたことで断られ続けて、自分達がランチを食べる場所がどこにもなくなって…と述べているところがありました。

当時のことをファッション美術館の学芸員の方に聞いたことがあるのですが、その方が大学生だったとき、大学の学長クラスの改まった講義を受けるときなど、パンツ(そのときはジーンズだったらしいので一概にいえませんが)ではいけないと指摘を受けたりしたそうです。

高級レストランで締め出しをくらうほど女性がパンツをはくことに抵抗があった世の中で、ある行動を起こした人もいます。ナン・ケンプナーがその人です。華やかなパーソナリティで知られたアメリカ社交界の花形で、イヴ・サンローランのオートクチュールの大顧客の一人。MOMAのジュニア・カウンシルのメンバーになるなど、ニューヨーク社交界では影響力の大きな人物でした。

イヴ・サンローランとナン・ケンプナー

彼女はバスク海岸調のチュニック・パンツを着てニューヨークのレストランに行き、パンツをはいていることを理由に入店を断られてしまいます。そこで彼女はその場でパンツを脱ぐという行動に出ます。今にも下着が見えそうなチュニックのみで堂々とレストランに入っていったと…。

あまりに面白い出来事だったので、当時のことをネットでできる範囲で調べてみました。日本の記事にはほとんどなかったものの、英語の記事では、「removed her trousers」「took off the bottom」「removed the bottom」など「パンツを脱いで抗議」したこの当時のエピソードのオンパレードでした。
また、その事件が起きたレストラン「La Cote Basque」について調べたところ、ジャクリーン・ケネディ・オナシスやC.Z.ゲストなどが集い、ニューヨークの上流階級の社交場でもあったそう。当時の写真も見つかって、とても意外で新鮮な気分でした。

また、服装史の講座を受けた時、講師の方に聞いてみたのですが、当時の雑誌や新聞などの記事では特に残っていないそうで、あくまで噂レベルだったとのこと。特にパリでは当時の時代の流れもあり、このようなアクションをとる女性がたびたびいたのだそう。

その時伺った話で加えて意外だったのが、サンローラン自身、女性は女性らしくスカートをはくべきだと昔ながらの考えを依然と持っていてパンツスーツも「昔ながらの伝統的な女性らしさ」を引き立てるための延長線だということ。それを当時のフェミニスト達が勘違いしたということらしいです。

ファッションの歴史では本来その立場や身分ではない者が新しい提案を行い、身分不相応だとか「勘違い」だとか叩かれ続けたのちそのスタイルが浸透し、それが今のラグジュアリーファッションをつくっていたりするのも面白いところです。

シャネルが女性に自由を与えたのであれば、サンローランは女性の肩に男性の服を置くことによって女性に権力を与えたといわれ、結局のところ私たちはその「勘違い」の恩恵をたっぷり受けることができています。「ファッションは勘違いからはじまる」のもあながち悪くないなあと思いました。

オフィスなどの公の場所での服装のルールとして、相手を不快にさせない、敬意のある服装をすべきだといわれれば確かにそのとおりですし、まともな社会人だと見られたいです。とはいえ、女性が男性の服を着ることで、相手に敬意を払ってないとか、はたして不快になったりするものなのか、いろいろ考えてしまいました。
そういえば今でも学生が就職活動する際、着用するリクルートスーツはパンツよりもスカートにすべきだという風潮があったりしますね!現在においても長い議論になりそうな内容だなあと思います。

 

第五回は日本のデザイナーが欧米のファッションや社会の既成概念をひっくり返した衝撃の80年代と、昨今のファッションとテクノロジーと平和(!?)について考えてみたいと思います。

第一回:女性の仕事服はなぜできた?現代にも続く20世紀以前のファッション 《連載:ファッションオタクのサーバエンジニアが見る女性とファッション・スタイルの文化史(1)》

第二回:解放され仕事を手にした女性たちと20世紀前半のファッション《連載:ファッションオタクのサーバエンジニアが見る女性とファッション・スタイルの文化史(2)》

第三回:やっぱり女は守られたい?それとも自立したい?ディオールとシャネルの関係 で見る20世紀半ばのファッション 《連載:ファッションオタクのサーバエンジニアが見る女性とファッション・スタイルの文化史(3)》

Text.  ryoko
Illustration. Sandra

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