FASHION
【Interview -ファッション業界で働く- 】 HOEK 大井美代(後編)
ファッション好きなら一度は覗いてみたい、ファッション業界。【Interview -ファッション業界で働く-】はファッション業界で働く方々に、ファッションに目覚めたきっかけや今の仕事に就いた経緯、お仕事の魅力などを伺うインタビュー連載です。第4回は HOEK 大井美代さんに登場していただきます。
衣食住、すべてのバランスを大事にする大井夫妻のこだわりが詰まった「HOEK」。お二人のセンスが見事に調和し、和やかで洗練された雰囲気に現れているのだと肌で感じる空間です。前回から続いて、後半ではいよいよ美代さんが考えるファッション論、お店の未来についてお聞きしました。
Interview
— 販売員時代にご主人と出会われて、デザイナーやプレスを経験して…いよいよ次はセレクトショップのオープンでしょうか?
デザイナーを辞めて、いよいよ二人でお店を開く準備の為にお金を貯めようとしたのですが、衣食住のバランスが取れた快適な生活を求めすぎてお金が貯まらず(笑)貯金のために派遣で一般企業の受付として働き始めました。接客という意味では販売と共通するところはあったけれど、畑が違いすぎてやってみると随分と奥が深く勉強になりました。何の仕事でもプロとして向かい合えばどれだけでも掘り下げられるものなんですよね。お客様の和ませ方を研究したり、部屋のブラインドの角度を計算したり気がつけば仕事にのめり込んで、自分の業務とは関係のない受付のマニュアルを作っていました(笑)
年齢的に次の行動に移るため、派遣の仕事もそろそろ終わりかなと思っていた頃、私たちの理想のお店っていうのがゆったりとした雰囲気の緑に囲まれた雰囲気だったのですが、丁度おばあちゃんが住んでいた家で、その当時空き家になっていた長野の広い古民家に移り住もうとなって、仕事を辞めて夫婦ともに長野へ移りました。
リフォームして何かやりたいねと話していたのですが、ちょうどそのとき震災があり、お店の計画は一旦断念。主人は長野に引っ越したと同時にhalutaという北欧家具・雑貨の会社に就職して、ファッションやインテリア関係のことを数年やっていたのですが、その後東京の転勤が決まり、再び東京に戻ることに。そして2015年8月、ようやく「HOEK」がオープンしました。
— 販売、デザイナー、さらに他業界を経験されて、自分たちのセレクトショップを開く土壌が整ったわけですね。HOEKでは生活雑貨を中心にセレクトしていますが、どのようなことを提案していきたいですか?
販売をやっていた時は服をたくさん買っていたけれど、一回やめると、しかも田舎に住んでみると、服は本当に気に入った最低限のものでいいと思いました。改めて服の良いところに目を向けることもできたし、流行り廃りの消費社会の無駄の多さにもハッとしました。消費することは楽しさもあるし、生きていく上で必要な部分ではあるけれど、永続的に未来へ繋がっていくことではないんですよね。
私が高校生の時にチャームを自作していたように、ファッションはお金がなくても楽しめる。安いものをたくさん買って消費するんじゃなくて、本当に上質なものを一年に数回買って、あとは古着で値段以上のものを探し集めたり、そういった楽しみ方を提案していきたいです。「こういう見方もあるんだよ」と発信できるお店になっていければいいかなと思います。
— 美代さんが考えるファッション論を教えてください。
値段やブランドより、自分が本当に気に入るかどうかです。今は子供が汚すのでよっぽど気に入らないと服は買いません。家にいる時は動きやすいようにラフなロングワンピ、外へ出る時は元から持っているちょっといいものを羽織ったり、オンオフで切り替えています。今日履いているのはAPCのデニムなんですけど、長く着られるかどうかも大事。
あまり女性っぽい格好は得意ではないのですが、今は妊娠中でお腹も出ているので、ふわっとしたものを合わせることもあります。子供が生まれてからヒールは履かなくなりました。でも子供が大きくなったらまた履こうかな。ファッションはライフスタイルに合わせて変化していくものですよね。
— 美代さんのお話を聞いて、衣食住のバランス、モノの価値としっかり向き合っているからこそ、ファッションにも自然体なスタイルが現れるのだと思いました。そういえばお子様もとってもおしゃれ!
では最後に、今後の目標を教えてください。
ただ売るだけではなくて、自分たちの考えが反映できるようなことも発信していきたいなと思っています。お店を始めたばかりで、経営の大変さが身に染みていますが、少しずつ進化させていけたらなと。
お金があればできることは広がるけれど、無駄に使うんじゃなくて、新しいことを切り開くために使って行きたいです。自分たちが関わってきた世界以外にも目を向けて、結果的にひとりでも多くのひとにハッピーを感じてもらえる事が目標です。例えばそれが恵まれない国に援助することにつながればそういうのも大きな目標ですが、まずは目の前のお客様にちょっとした心の幸せを感じてもらえるようなことを大事に、意思をもって居心地の良い対応、接客、提案を心掛けていきたいです。小さな波から大きな流れを作り出せたら良いなと思っています。
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Text. Azu Satoh