FASHION
春夏、クルーズ、プレ…?「コレクション」って何?《連載:ファッション業界って何?》
「AWコレクション入荷しました!」「2017春夏コレクションの予約受付中です!」店頭でこんな言葉を聞いたことはありませんか?なんとなく耳にしたことがある「コレクション」という言葉ですが、秋冬・春夏の2つに分かれていると思ったら大間違い。実は、もっともっと細かく分かれています。第3回にわたってご紹介する《連載:ファッション業界って何?》シリーズ、第1回目のファッションウィークに続き第2回は展示会、最終回はコレクションスケジュールに関してのお話です。
コレクションとは
コレクションとはアパレルブランドの商品ラインナップのこと。◯◯コレクションと表記されていれば◯◯の部分がその商品ラインナップが展開されるシーズンということです。例えば『S for SHOKO 秋冬コレクションの魅力を徹底解説!』の記事ではS for SHOKOが秋冬に展開しているラインナップの話をしています。ここまでは簡単なのですが、最近では “プレ” “クルーズ” なんて言葉も聞くようになりました。
コレクション発表から発売まで
一般的にレディースのプレタポルテ(※1)はショーや展示会形式で発表から発売まで、5〜6ヶ月のズレがあります。9月に発表された春夏コレクションが店頭に並ぶのは早くて翌年の2月ということです。(しかし、最近ではSee now, Buy nowという新たなシステムが登場しファッション業界を混乱させています。その話については『See now, Buy now!今見たものはすぐ買いたいの?話』をご覧下さい)
《コレクション発表 → 展示会(受注、生産数決定)→ 生産 → 店頭》
ざっくりと説明すると発表から店頭に並ぶまでは上記のような流れになります。これと並行して、キャンペーンや雑誌の撮影などの広報活動も行われます。オートクチュール(※2)は発表から発売まで3ヶ月、最もタイムラグがあるメンズコレクションは約9ヶ月も待たなければいけません。
上の写真は2015年3月のパリコレクションで発表された「MASHA MA(マーシャ・マー)」2015AWコレクションです。(ショーで座席案内などのPRアシスタントをした後、モップアシスタントに降格)午前中にコレクションを発表して夕方にはショールーム設営完了という速さ。この後数日ほど展示会が行われ、いよいよコレクションの命運を左右するビジネスが始まります。日本だとショー発表から展示会まで少し間が空いてしまうことがあり、商談の機会損失になっているのでは、と問題視されています。
(※1)既製服。サイズがあらかじめ決まっている、私たちが普段買って着ている服のこと。
(※2)高級仕立て服。顧客のサイズに合わせて1着ずつ仕立てられる服。日本ではあまり見られない。レッドカーペット用のドレスやアーティストの衣装などに用いられることが多い。
コレクション発表スケジュール
コレクションのメインとなるの春夏・秋冬のプレタポルテコレクションは、NY → LONDON → MILANO → PARIS → TOKYO の順で開催されます。間髪入れずに一ヶ月続く過酷なスケジュール!他にもシドニーやソウル、ベルリンなど世界中で開催されています。
2013年2月のロンドンファッションウィーク。ハイド・パークに出現したBURBERRY PRORSUMの特設会場にはセレブがずらり。
ロンドンが終わった翌日にはミラノファッションウィークがスタート。街中に設置される巨大ディスプレイで誰でもランウェイを見ることができます。こちらは2013年2月のミラノファッションウィーク。
レディースプレタポルテの他にメンズコレクションなどを加えた1年間のコレクション発表スケジュールを1月からざっと見てみると、ほぼ2ヶ月に一度のペースで何かしら発表されていることがわかります。
【1月】メンズAW、オートクチュールSS
【2月〜3月】秋冬Autumn/Winter
【5〜6月】プレSpring、クルーズ、リゾート
【6〜7月】メンズAW、オートクチュールSS
【9〜10月】春夏Spring/Summer
【12月〜1月】プレFall
2013年6月に行われたParisメンズ。KENZOのショーは郊外のサーカス場で行われました。
メンズのコレクション発表ということもあり、来場者は素敵メンズがずらり。
クルーズ、リゾート、プレって?
プレコレクションはメインの春夏・秋冬の前に発表される、小規模なコレクションのこと。ブランドによってクルーズ・リゾート・ホリデーなど、様々な呼び方があります。
クルーズ、リゾートコレクションは春夏コレクションのプレにあたり、5〜6月に発表され、11月〜1月に店頭に並びます。「あれ、11月に売るのにリゾート?」と疑問に思うかもしれませんが、周りにいませんか?年末年始にハワイに行く人。そんな人たちに向けた、バカンスに着て行きたくなるような服が並びます。日本に比べバカンス文化が根付いてる欧州では大事なコレクションです。もちろんバカンスに行かない人も着ることができますよ!
ファッションオタク、ランウェイ好きは必ずチェックするVogueRunway.com(旧 STYLE.COM)を見てみると、ルックの掲載がある1991年から2006年まではSS、AW、Couture、Mensのみですが、2007年からResortが入ってきています。春夏・秋冬の2回だけでは消費者の需要に応えられなくなったため、この頃から間を埋めるようにプレコレクションが展開されるようになりました。ランウェイで発表される「これ着られますか?」というメインコレクションとは異なり、より着やすく売りやすい服が並ぶのがプレコレクションの特徴です。
新しい商品が次々に出てくるので、消費者にとってコレクションが増えるのは嬉しいこと。しかし、このスケジュールをみると、いかにファッション業界が過密なスケジュールで回っているのかが分かります。ファストファッションと言って思い浮かべるブランドだけが早いサイクルで服を作り出しているわけではありません。コレクションブランドと言われるところも同じで、3ヶ月に一度のペースで新作を発表しながらクリエイティビティを維持するのはとても大変なこと。常に新しいものを求められるファッション業界なら、なおさら厳しいことだというのは想像に難くありません。
早いサイクルで作られた服だからと早く消費してしまっても良いのでしょうか?次にお店で手に取った服が、どんなサイクルで作られているか、少し想像してみてください。
知っているようで知らないファッション業界の仕組みをイチから解説する《連載:ファッション業界って何?》シリーズ。「ファッションウィークって何?」「展示会って何?」に引き続き、今回はコレクションについて分かりやすく解説しました。そろそろネタ切れなので、次回のネタを探しに「ココがナゾだよファッション業界」を聞き取り調査しに出かけてきます!
※この記事は2015年11月11日にS MAGAZINEに掲載された記事をリライトしたものです。
Text : Azu Satoh