FASHION
「ROBE屋」は本当の意味で新鋭ブランドの支援になる | ROBE編集長 佐藤亜都
2018年5月3日(木)〜6日(日)の4日間限定で開催されるポップアップショップ『ROBE屋』。その起点となっているのが、越境レディのためのマガジンとして、2016年に始まったメディア『ROBE(ローブ)』です。
2016年にWEBマガジンとして創刊された『ROBE』は、その後SNS運営のみの分散型メディア(*1)、タブロイド紙の発刊を経て、今回のROBE屋で遂にリアルの場でファンとふれあいます。
今回は、そんなROBE編集長の佐藤亜都(さとうあづ)さんに、今回のROBE屋に込められた想いをお話し頂きました。
*期間限定セレクトショップ『ROBE屋』
ファッションメディアROBEが5-knot、EAUSEENONなど新鋭ブランドを集めたポップアップを開催
佐藤亜都(さとうあづ)
早稲田大学在学中に渡仏。たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。卒業後、 東京コレクション関連イベントの企画運営をした後、新卒で入社したセレクトショップにて販売を担当。スタイラー参画後はメディア『ROBE』を立ち上げ編集長に就任。
ROBE屋は「読者の声」から始まった
― 早速ですが、今回の『ROBE屋』はどういった経緯で始まったのでしょうか?
佐藤:現在『ROBE』は、SNS上のみで情報を発信しており、そこでは若手ブランドの展示会やファッションウィークのレポートをメインコンテンツとして発信しています。
なので、半年先の商品を掲載しているんですね。そうすると、それを見た読者の方からtwitter・InstagramのDMやメールなどで、商品の情報について問い合わせをいただくことが多かったんです。
― それで、ポップアップショップを開催した方が早いんじゃないかと。
佐藤:そうですね。でも理由はそれだけではなくて。『ROBE』自体が若手ブランドにフォーカスするような媒体なので、取り上げているブランドは今は卸先が少ないブランドも多いんです。そうすると、読者の方々がROBEで情報を見て、詳細を探してもそこまで情報が出てこない。自社ECもあるわけではなく、大手セレクトショップや個店に卸していたとしても希望する型があるかもわかりません。そもそも、値段も安いわけではないので、ネットで気軽に買えるというわけでもなくて。
それでも、ROBEでブランドのポップアップに関する情報を発信すれば、読者の方がROBEを見て実際に訪れていることも多いみたいなんですね。「読者は実際に商品を見ることができる場所さえあれば、ちゃんと動いてくれるんだなぁ」と実感したので、そんな場所を作りたいと思ったことがきっかけです。
ファッション業界の「課題」への想い
― 今、業界全体で「若手デザイナーの育成」の気運が高まりつつあるとは思うのですが、今回のROBE屋もそのような想いが強いのでしょうか?
佐藤:もちろん、若手デザイナーの支援についてはずっと考えています。一方で業界全体で気運は高まっているにも関わらず、解決できていない問題が多いのも事実です。
まず一つは、他のビジネスと比べて「商売期間」が圧倒的に短いこと。
これは少し大げさですが、デザイナー(ブランド)がセレクトショップなどの卸先に洋服(商品)を売り込むことができるのは、展示会が行われている半年に一度の数日間だけ。極端な話、それで半年分の売上がほぼ決まってしまうのです。しかも、今やショップの数は減少し、バイヤーの予算自体も縮小している。一方で、ブランドの数自体はそこまで減らないわけです。ファッション業界に限りませんが、特に最近は「メディアが若手を消費している」と感じることもあって、注目するだけしてネタとして鮮度が過ぎたらポイ、という流れがある気がして。若手は表面的には出てきやすいけど、継続しにくい環境なのかなとも思っています。
絵型やルックの写真だけで買い付けてくれる時代もあったと聞きますが、今は洋服も売れない時代。バイヤーも「売れるもの」を求めて慎重になりますよね。販売力が未知数の新しいブランドに予算を割くよりも、今売れていて昔からお付き合いのあるブランドに予算をかけるのは、面白くはないけれどビジネス的には当たり前の選択肢なのかもしれません。
どのお店に行っても品揃えが似ている。そんなつまらない状況に嫌気がさしたファッション感度の高い若い子は、そりゃ自分でネットの海からブランドを探してきますよね。やろうと思えば海外の若手ブランドにDMを送って直接買うことだってできるかもしれない。誰だってSNSで欲しいものを掴める時代に、リアル店舗は保守的になってどうするんだって、正直思います(笑)
二つ目は、物理的なショップとの距離の問題。
若手ブランドが名を上げるにはやはり東京が一番良い都市だと思うのですが、すでに東京は洋服で溢れている。一方で、地方には大手セレクトショップで経験を積んで独立したような、独自の視点でバイイングをする面白い個店さんが多い。
でも地方のバイヤーさんが東京にバイイングに来れる期間は限られていて、全てのブランドの展示会を周りきれるわけはない。ブランド側がサンプルを持って地方巡回をしない限り、積極的に卸先を開拓することはなかなか難しいそうです。東京で一週間展示会を開くよりも、本当は3日間ずつ3都市で行った方が勝率は上がるのかもしれませんが、交通費など考えるとそれも若手にはなかなか難しいことなんですよね。バーチャル展示会ができれば面白いんですけどね(笑)
― 若手ブランドが成長しづらいのはビジネス上の課題、が大きいですね。
佐藤:はい。卸先がなければ消費者にも届きませんからね。なので実際に新鋭ブランドの実物が様々な人の目に触れる機会を作ろうと思って、今回の企画に至りました。ROBEの読者には一般の方だけではなく、個店のオーナーさんなどファッション業界に従事している方もいらっしゃるようなので、ぜひこの機会に本物に触れていただきたいと思っています。どのブランドも実際に私が展示会に伺って、デザイナーさんの人となりを知っているところばかりなので、その辺りも含めて接客できたらと思います。。
幼少期からの「バイヤー気質」
― ROBEの立ち上げ前には、大手セレクトショップでの販売員も経験しているのですね。
佐藤:先日自分のnoteでも記したのですが、洋服を自分で選ぶのは小学生の通販雑誌めくりが発端でした。それからずっと洋服は着るのも買うのも好きで、ファッション業界で働くというのは当たり前の進路でした。元々、中学生くらいから「海外、国内問わず新しいものを見つけてきてみんなで共有するのが好き」みたいな性格でしたね。今はそんな風に思われないのですが、女の子特有の「きゃー!これ可愛いー!」とキャピキャピ騒ぐ感じが実は好きで。そういう性格もあって、ROBEを立ち上げました。
新卒で大手セレクトショップで販売員をしていく中で、お客様一人一人にブランドの良さを伝えることはできたし、服の値段だけではない価値を知ってもらうことの大切さも実感しました。一方で、それはすごく時間のかかることでもあったんです。そこで「もう少し効率よくブランドの良さを伝達できたら…」と思ってメディアを立ち上げました。
もちろんメディアである以上、対象は不特定多数になりますが、まずは情報を発信して、しっかりファンを作ることができればそれでいいと思ったんです。
後編に続く
(*1)分散型メディア・・・特定のドメインを持たず、SNSのみで情報を発信するWEBメディアの形式。