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FASHION

白い壁に記憶を映して – LAMARCK 18SS【ランウェイのケセラセラ】

「少し秋っぽくなってきましたね。」そんな挨拶を交わし始める頃、ファッション業界は春夏へと衣替えを始める。NY、ロンドン、ミラノ、パリ、東京と続く約一ヶ月半に及ぶコレクションサーキットが幕を開ける少し前、一足先にLAMARCK(ラマルク)の春夏ショーが開催された。【ランウェイのケセラセラ】は気まぐれでお届けする、ランウェイの走り書きメモ。

空間と時間の間に生まれるもの

ファッションショーが始まる前の数十分、来場者の話し声をBGMにしながら、ショーのコンセプトが記されたリリースを眺めて過ごすことが多い。まだまだ業界の中では新米の私にとって、正直この時間はきつい。なぜなら周りは業界の大先輩であるジャーナリストやエディターばかりで、気軽に話ができる人はほぼいないからだ。

できることといえば、聞き耳を立てるかリリースを読み込むか、SNSの投稿準備をするくらい。大きい会場であれば来場者のチェックや観察ができるものの、今回はそうも行かなかった。会場は恵比寿の小さなギャラリースペース。普段は展示会を行うような小さな部屋に配置されたのはたった二列の椅子。来場者は白い壁と向き合うように座り、今か今かとショーの開始を待つ。


私と白い壁の距離は、モデルが通れるくらいの幅しかない。リリースに記してあった「空間と時間との融和の中に新生するすべての女性達へ。」という言葉に思いを馳せる。目の前の白い壁をぼぅっと眺めながら、次第に話し声のBGMが遠のいていくと、距離感が曖昧になり空間の概念が崩れていくのを感じた。

壁と一体化してしまうのではと思い始めた頃、静かにショーが始まる。ファーストルックはオールホワイト。経年変化で少し黄味がかった白い壁によく映える純白だ。緻密なレースで袖の中間を透かしたロングシャツに総レースのパンツを合わせたドレスのようなレイヤード。


そこから白いルックが二体続いた後、風車や木が描かれた総柄のセットアップが登場。急なトーンの変化にハッと目が覚めると思いきや、自然と白い壁に馴染んでいった。縦縞のジャケットや鳥を模したコードの装飾、真っ赤なプリーツドレスなど次第に色や装飾が増えていくが、いい意味で温度の変化はない。おそらくこのルックの順番は時系列で捉えるものではないと、どこかで腑に落ちたからだ。それは白い壁を眺めた数十分があったからだろうか。


懐かしい景色を思い浮かべ、それ全体を愛でる。そして一部をクローズアップし、色を色として思い出す。花を花として思い出す。白い壁をスクリーンにして、投影されるかのように歩いていくモデル達は、脳裏に浮かぶ記憶そのものだったのかもしれない。この春夏コレクションはデザイナー自身のルーツを元にデザインされている。テキスタイルに描かれていたのは長崎の風車だそうだが、私は昔一人旅で訪れた兼六園と池と魚を思い出した。

ラストルックは細い7色の糸が揺れるカットジャカードのツーピース。波佐見焼をイメージした青と白のコントラストが美しい、ラストにふさわしいルックだった。揺れる糸が残像を残していくから、ショーが終わる前にそっと目を閉じて時間と空間をリセットした。

ランウェイの余韻をそのままに

ファッションショーが終わると取材陣は「囲み取材」と呼ばれる、デザイナーへの合同インタビューへと向かう。ワイドショーで見るような光景だったのではじめこそ緊張したものの、今ではなんとなく、飲み込み方がわかってきた。

普通囲み取材が終わるとそのまま解散、もしくは個別インタビューになるのだが、この日は違う。さっきまでランウェイだった会場が展示会場に早変わりしていた。See now, Buy nowならぬ、See now, Re-See nowだ。( Re-Seeとは展示会のこと。)

ショー後に服を手に取ることができるのは、日本だとだいたい数日後なので、見たその瞬間の感性や疑問をそのまま服にぶつけられるのはとても良い試みだと思った。パリで手伝った展示会の設営を思い出しながら、その大変さを想像して心の中で敬礼。時間と空間の融合、隔たりをなくすということをテーマに掲げたコレクションだったので、ショー会場 / 展示会場の境目をなくしたそうだ。



LAMARCKが描くようなストーリーを感じる服、背景が見える服は着る人の軸はもちろん、空間があってこそより魅力を発揮するものだと思う。服はたしかにデザイナーが思いを乗せて作り出すものだが、着る人こそが完成者になり得るのだ。


私たちは服を媒介にしてそのストーリー=記憶を受け取り、新しい記憶へと変えていく。その服を着てどんな空間で生きていくかは、私たち次第。まさに発表されたこの瞬間はまっさらなキャンバスに並べられた状態で、時間と空間を越えて、何度も新生されていく。

text. Azu Satoh

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