FASHION
G.V.G.V.で華やかにディスコデビューの話《水曜のケセラセラ》
こんにちは、ROBE編集長のAzuです。気まぐれ連載《水曜のケセラセラ》第28回目になりました。前回は春夏のお買い物リストを愛を込めて披露させていただきました。今回は一気に季節をまたぎ、今年の秋冬コレクションのお話です。
ファッション業界にいるからには異なる季節を捉える二つの頭を持っていなければいけません。今何が売れているか、街中でよく着られているアイテムは何か、それは何故かなど、まさに呼吸をしている今この瞬間の季節を考えられる頭と、次のシーズンに売り出される来コレクションを見てトレンドを予測する半年先の季節を考えられる頭の二つです。この場合、季節と時代はほぼ同義です。(コレクションのスケジュール解説についてはこちらをご覧くださいませ。)
今週月曜日は一足先に半年先の季節へとタイムスリップしてきました。向かった先は恵比寿リキッドルーム。東京でのショー開催が4年ぶりとなるG.V.G.V.の記念すべき凱旋ショーにお邪魔してきました。
キラキラ恐怖症
8:40 P.M. 会場に入るとそこは強風吹き荒れる外界とは一転、音楽に身を委ね気持ち良さそうに体を揺らす観客たち。ミラーボールの光でランダムに照らされるダンスフロアはまるで宇宙空間か深海のようです。夜9時からのショータイムにふさわしいDJプレイが会場のボルテージをすでに高めていました。
「大変だ、キラキラしている…!」私の危険探知機がそう告げます。キラキラで華やかなファッション業界に身を置きながらもすりガラスのような雲ってザラついた精神を宿してしまった私には、バカラのように高貴な音を奏でながら輝く本物のキラキラ業界人はそれはもう眩しくて。誤解を恐れずに言うならば彼らは生きるレーザー光線なのです。
休日は壁と話をするか家の近所を散歩することしかしない、業界人のイメージとは程遠い私生活を送る私にとって、ファッションショーとは半年後、そして知らない別世界にタイムスリップできる夢のような装置。しかし夢を味わうには必ず痛みがつきまといます。憧れの人やモノを目の前にすると、少なからず胸が痛む感覚、それに近いでしょうか。
ディスコに行ったことがない、クラブにも行ったことがない。ひとりパーティー取材は慣れない空間と空きっ腹のアルコールで胃がキリキリ。そんな地味業界人の私がついにディスコデビュー!
予定時刻からおよそ20分ほど遅れてショーはスタート。さぁここからがショートタイムスリップのはじまりです。世界が暗転さえすれば、もう私のキリキリはおしまい。
スパンコールやラメ糸が輝くジャカード、こぼれそうなほど大きなビジューのアクセサリーなどbling-blingなルックであふれたコレクションはまさにディスコクイーンの晴れ舞台。ディスコには行ったことがないしいつまでたってもパーティーには馴染めないけど、そんなことおかまいなしに別世界へ連れて行ってくれるのがファッションの力なんです。
開始直前まで息を殺してカメラマン席で潜んでいた私は一瞬のうちにG.V.G.V.が描き出したモダン・ディスコクイーンの信者になっていました。一眼、スマホの二刀流で息つく暇もなくSNSを更新した私の興奮具合がこちらです。
はじめはいつも通りビクビクしていましたが、会場演出まで含めたエンターテイメントとしてのファッションショーを存分に楽しませていただきました。さて、ノームコアの終焉と先シーズンあたりから囁かれていますが、いよいよ新装飾主義の到来です。ボディコンシャスではなく全身にメリハリを付けるような部分的な締め付け。フェイクファー、ビジューであえてチープに見せる装飾のバランス感など、ノームコアよりよっぽどハードルが上がりますが面白くなってきたじゃありませんか!一筋縄じゃいかないものほど心惹かれるのは世の常でございます。
さいごに誤解がないように言いますが、大抵のギョーカイ人は怯えるほどまではキラキラしていません(笑)ただ、楽しんで仕事をしているという意味ではキラキラ率が高いのかも、と補足して締めさせていただきます。
G.V.G.V. 2017 AW Show
text. Azu Satoh