FASHION
ティンカーベルもしくはコガネムシの服の話《水曜のケセラセラ》
こんにちは、ROBE編集長のAzuです。気まぐれ連載《水曜のケセラセラ》、今のところ毎週更新しています。前回は今話題のブランドに触れるという、ちょっとヒヤッとする題材を扱いましたが、ラグジュアリーについて考え直すいいきっかけになったとお言葉をいただき、陰で泣いてました。今回はライトなテーマで。どうぞお付き合い願います。
ファッションは自由である。私はそう考えます。
ROBEでは今表現したい女性像をシューティングする「THE LADY」という企画を冒頭に置いているのですが、ちょうどいまは「Liberté=自由」をテーマに掲げています。
なぜそのテーマを掲げたのかというと、ファッションがいま、自由ではないと感じているからです。そんなことを言うととても偉そうに聞こえるかもしれないけれど、こんな考えもあるのだな、程度に聞き流してください。
じゃあ自由って何だよ!という話。ファッションにおける自由とは、当たり前だけど、個々人が着たいものを好きに着ることです。流行に乗ろうが乗るまいが勝手だし、ダサかろうがイケてようが知らんこっちゃありません。そもそも何がダサくて何がイケてるのか、それって誰も決めようがないものです。私が「デニムはカットオフが熱いよ!」「ピアスは片耳がクールだぜ!」といくら叫んでも、フムフムそうですか、くらいに受け止めてください。(メディアなのにこんなことを言っていいのだろうか)
でも、好きなものを着る・見つけることがいかに難しいか、クローゼットやショップに並べられた大量の服を目の前に、きっと何度も感じたことがあるはず。「着たいけど似合わないから着れない」「選択肢がありすぎて着たいものがわからない」と。
ファッションって、怖いんですよね。「これ着たらダサいって言われるかも」「雑誌でNGスタイルって出てたよなあ」とか、気にしだすとキリがない。だから無難な服になりがちな時もある。もちろんスタイルはTPOを考えて選ぶものなので、単純に冒険すればいいって話ではないです。
今はスタイリストによるコーディネート指南のサービスやまるまるレンタルなど、ファッションをラクチンに楽しむ方法がたくさん出てきています。ファッションを難しいと感じている人にとってはとても便利なサービス。でも、「見かけの自分らしさ」は自ら考え選んで、失敗して恥をかいて、そうした経験を積み重ねることでしか得られないんじゃないかなと思うのです。自由って多くの選択肢と規律があってこそのもので、便利なようで狭い枠が乱立している今のファッションは、あまり自由とは言えないんじゃないかなって、思ったり。
全然ライトな話じゃなくなった。偉そうに、ファッションがなんたらと語っている私ですが、数々の失敗をしてきました。編み上げの服を着たらボンレスハム、お気に入りのチェックのミニスカは伊勢丹の紙袋、エッジィなワンピはセンターマン、意気込んで買った勝負チュニックはその輝きからコガネムシと言われてきた。私はティンカーベルだと思っていたのだけれど。
そんな周りからの言葉で、時に傷つき時にネタにしながら、ファッションを心の底から楽しんできました。今はTPO、その日の気分に合わせながら自由に選択し、冒険し続けている最中です。
お気づきかもしれませんが、今並べている画像は私が今までランウェイやストリートで撮ってきた「変な生き物バッグコレクション」略して変コレ。上から今シーズンのKEITA MARUYAMA、LOEWEのゾウさんショルダー(こちらのピンクな彼女の持ち物です)、某放送局の謎の生物、たい焼き、です。
自由にファッションを楽しむ!と言っても、なかなか全身で満喫して、なりたいものになれるわけではありません。だから、こんなウィットに富んだ小物から遊んでみてはどうでしょう?
最近自由にファッションを楽しむことをサボっていた私。先日銀座にオープンした東急プラザ銀座の内覧会にお邪魔した際、H.P. FRANCEが展開するセレクトショップ、CONCENTO PARIS H.P. FRANCEに感動しました。J.W. ANDERSONやMSGMなど今をときめくデザイナーズブランドから見たこともないぶっ飛んだデザインのブランドまで揃い、そこは銀座とは思えない、おもちゃ箱をひっくり返したようなクレイジーでファンタジーな空間。ここで見つけた「変コレ」はTOPのザリガニちゃんBAG。トルコのアクセサリーブランド「BEGART」のものです。左手(?)からぶら下がっているのはエサなんだとか…!!!
日々の喧騒にのまれ忘れかけていた「自由にファッションを楽しむ」という夢。そんなワクワクを思い出せる場所に出会えた喜びを胸にしまい、颯爽と銀座レディを気取って帰路に着いたのでした。明日はスベってもいいから、好きな格好しよう!
Text. Azu Satoh