FASHION
背伸びした青いワンピースの話《水曜のケセラセラ》
水曜日は気まぐれ更新で思っていることをつらつら書き留めていくことにしました。週の半ばの箸休め的な感じです。ニュアンスで略して《水曜のケセラセラ》
ROBE編集長のAzuです。どうぞお付き合い願います。
青いワンピースの話。
誰にでも背伸びして買ってしまった服やバッグってあるはず。それ自体は輝いて見えるんだけど、ちっぽけな自分とはちぐはぐなモノたち。きっと一つや二つじゃないでしょう。
小学生の時はマルキュー系ブランドに憧れ、他の子と差をつけたくて、赤文字系アンサンブルを着て慣れないヒールをグラグラと履いていた高校時代。女の子って背伸びしたがる生き物なのよね、小さい時から。現状に満足することは永遠にない。
こうして私の洋服遍歴の中には埋もれていった「背伸び服」が数知れず。その中でも一番背伸びをしていたのは、「MM6の青いワンピース」だと思う。
当時20歳。ファッションについて何も知らなかった私は、それに関してとても博識で大人な雰囲気を持つ2つ上の先輩に一目惚れ。彼がよく着ていたブランド「Maison Martin Margiela(メゾンマルタンマルジェラ)」(今はMaison Margielaに名前が変わっています)の存在を知り、近づきたい一心でブランドのことを調べたり、緊張しながら路面店に行ってみたり。
乙女の探究心は凄まじい。時に恐ろしい。彼が好きなブランドを身につければ、フィロソフィーを少しでも理解できると思い込んでいた。(あぁどうかこの記事を見ないでほしい!)
とはいえ、マルジェラは学生が買えるようなお値段ではありません。留学資金も貯めなければいけないし、服にばかりお金をかけていられない…でも憧れの(人が着ている)ブランドを身につけてみたい…悩んでいたある日、私のスマホ画面に現れたのがこのワンピースでした。マルジェラのセカンドラインであるMM6のワンピースをリサイクルショップのECで発見したのです。
目が覚めるような青。前身頃のサテンの光沢と後ろ身頃の深く潔いブルーのコントラスト。当時の私にとっては大人っぽすぎるかな、と思うシンプルなシルエットに心を奪われました。
着こなせる自信はなかったけど、思い切って買うことに。数日後に届いた青いワンピースと対面した時、なんだか武器を手に入れたような気がしました。きっとこのワンピースを着たら、彼の前で背筋をしゃんと伸ばして、ハキハキ話せるはずだと。
なんとなく大人になりたいからと背伸びしていた今までの服とは違って、明確に届きたい目標があっての「背伸び服」。飽きたら捨てて次の服へ、を繰り返していた私の価値観が変わった時でもありました。背伸びした証を残して、何度も着直すことで、目標に届いた瞬間が分かるから。
あれから数年経った今、少しは似合うようになったかなぁと、季節は早いけど着てみました。うーん、まだまだ着直す必要はありそう。相変わらず綺麗な青だと思いながら、前はなかった染みを見つけて、時の流れを感じたのでした。
これは青空よりも青いソーダブルーがラッキーカラーになる前の話。この時はまだ、ラッキーカラーじゃなかったみたい。
Text. Azu Satoh