FASHION
布忍神社で恋みくじ。運命の捉え方の話《水曜のケセラセラ》
こんにちは、ROBE編集長のAzuです。気まぐれ連載《水曜のケセラセラ》第16回目になりました。前回はファッションという言葉の意味に感じる違和感のお話。今回も言葉について考えていきます。
駄菓子屋の10円ガム、ガリガリ君、チョコボールなど、小さい頃からアタリ/ハズレがあるものに目がありません。一喜一憂するおみくじも大好きで、神社に行く度に引いています。
先日、土日を利用して大阪と兵庫へ行ってきました。阪急梅田のMARNI FLOWER CAFEでひと休憩した後、梅田から御堂筋線、近鉄南大阪線に揺られること40分。向かったのは側に川が流れる小さな神社、布忍神社です。
この町に訪れた目的は「イチハラヒロコ恋みくじ」を引くこと。
実はこのおみくじ、通常のおみくじとは違い「大吉」「吉」「凶」などが書いてあるわけではありません。半透明の紙に黒々と浮かぶ文字が示すのは、吉凶ではなく、グサリと突き刺さる意味深なフレーズ。
「恋みくじと書いてあるけど、仕事運とかも見れますか?」と聞く欲張りな私に対して「仕事も恋のうちでしょう。」と神主さんはにこやかに告げてくれました。その瞬間、恋が芽生えそうになったのはここだけの秘密です。
さて、運命のおみくじタイム。ガラガラと筒を降り出てきたのは第十七番。
手際よく棚から出してくれた一枚の紙に浮かんでいた文字は「別れそう。」という何やら不吉な言葉。
恋人ナシ、問題ナシ、別れるものなど何もナシの私にとって「彼氏と別れる」という選択肢はありえないので、一体この紙が何を示してくれたのかピンときません。持っていないものは手放せないもの。
すると、???状態の私に、神主さんが一言。
「何から、別れそう?」
あぁそうか、と思いました。すっかり「別れる=破局、バッドエンド」と思い込んでいたけれど「誰と?何と?」の部分を変えるだけで意味は正反対になり得るのだなと。
例えば仕事に夢中でまさに恋するように仕事をしていたら、このおみくじが示す別れというのはなんでしょうか。「苦手な上司と別れそう。」「満足いかない今のポジションと別れそう。」など、いくらでも自分の状況に合わせて「別れそう。」という言葉を捉えることができます。
あれ、気づけば「別れ」がハッピーな意味になっている!私の場合は「(ひとり身の私と)別れそう。」なのです。私が言ったんじゃありません、神主さんとおみくじがそう告げてますから。
そう、このおみくじが伝えたかったことは、吉、凶、という結果だけに満足してその一瞬を楽しむのではなく、真正面から言葉を受け取り、自分が置かれた環境に当てはめてじっくりとその意味を考えるべき、ということ。
「みんなおみくじを引いても結果だけ見て中はあまり読まずに忘れていってしまうでしょ?でも、言葉ならば良し悪しではなく、何通りにも捉えることができるんですよ。」おみくじを引き終わった後、神主さんはそう話してくれました。
思いが強ければ強いほど、ついつい視野が狭くなってしまって、小さな点だけを見つめて一喜一憂してしまいがち。でも、枠に収められた文字だけではなく、その前後に漂う文字まで想像することができたら、誰だって笑顔になれるのです。
おみくじを引いた後は兵庫県・城崎温泉へ。志賀直哉の小説『城の崎にて』の舞台となった温泉地です。昼と夜ではまったく違う顔を見せてくれました。視点を変えれば見える景色は全く異なる。時がゆったりと流れるこの地では、運命の捉え方の鍵は「時間」なのかな、とも思ったり。
運命の捉え方はいつも言葉足らず。枠を飛び出し、ほんの少し言葉を足すだけで、運命が大きく回転することがあるのかもしれない。
Text : Azu Satoh