LIFE & CULTURE
フェンディと映画の深い関係、40年の時を超えヴィスコンティの名作『家族の肖像』が修復
いまなお映画界に絶大な影響力を誇る監督のひとりでもあるイタリアの映画監督、ルチーノ・ヴィスコンティ。晩年の代表作『家族の肖像』が40年近い時を経て、デジタル修復版として現在好評公開中。
あらすじ
ローマの高級住宅街。一人「家族の肖像」の絵画に囲まれて暮らす、老教授(バート・ランカスター)の静かで孤独な暮らしは、ある日突然の闖入者によって掻き乱される。ビアンカ・ブルモンティと名乗る、美しく気品のある伯爵夫人(シルヴァーナ・マンガーノ)とその家族たち、娘のリエッタ、婚約者ステファーノだ。全くその意思の無い老教授を強引に口説き落とし、彼女たちは階上の部屋を借りてしまう。
実際に階上に住み込んだのは、ビアンカの愛人であるコンラッド(ヘルムート・バーガー)だった。数日後、勝手に改装をし始めたコンラッド。教授との間に諍いが起こる。誤解が解けた後、教授はコンラッドに、予想もしなかった教養の片鱗を見る。ブルモンティ家との距離が少しだけ縮まり、教授は彼らを夕食に誘う。しかし、彼等は一向にやってくる気配を見せず、教授は一人夕食をとるのだった。
ある夜半、階上からのただならぬ物音に教授が駆けつけると、何者かが逃げ去っていくのと、怪我をして倒れているコンラッドを発見する。かつて戦時中に教授の母親が、ユダヤ人やパルチザンを匿う為に造った小部屋で介抱をした。また別の夜、書斎から漏れ聞こえる音楽に、教授が様子を見に行くと、若い三人が全裸で踊っている。リエッタの誘いに、教授は苦々しく自分の過去を思い返すしかない。
教授の元に刑事が訊ねてきた。拘束したコンラッドが、教授の家にいたと証言したからだった。警察から帰って来た教授とビアンカたちの間で、コンラッドを巡り言い争いになり、その後の数日を一人、不機嫌なままに過ごす。コンラッドの拘束は数日で終わり、また階上から物音が響いてくる日々がやってきた。ある日、騒音の文句を訴えたことから、教授はリエッタたちを翌日の食事に招くことになったのだが…。
家族、の定義とは
真っ先に感じるのは「家族ってなに?」という素朴な疑問。血縁関係を定義にすることは容易だけれど、赤の他人の(しかも不躾きわまりない)見知らぬ一家を “家族” と定義づける曖昧さに、正直頭をかかえるシーンは多い。困難を乗り越え芽生える愛情家族愛…、なんておきまりのパターンではないので悪しからず。
しかしそんな一鑑賞者の疑問がどこ吹く風と言わんばかりの映像美、徹底したカメラワーク、2Kからでも伝わってくる演技力…、映像の鮮明さとは無関係なまでに、どこを切り取っても生々しい美しさを感じさせられます。
フェンディと映画の関係、S・マンガーノ衣装にも注目
今回の2Kフィルム修復にあたってはフェンディの貢献無くして実現しなかったと言っても過言ではありません。2013年9月、ミラノ・モンテナポレオーネ通りの新旗艦店オープンに合わせた特別プロジェクトの一環として本作は制作された経緯があります。なお、フェンディと映画界との深いつながりをテーマに、同年 “Making Dreams: FENDI And The Cinema” という催しがローマのシネマ・マンゾーニにて開催されています。
劇中で、シルヴァーナ・マンガーノ演じる伯爵夫人が着こなすファーコート(ワシントン条約のため現在となっては製造すらできないだろうコートは必見!)はもちろんフェンディ。その豪華絢爛さは画面越しから十二分に伝わるはず。
ヴィスコンティ晩年の秀作が魅せる、圧倒的な美しさ。せっかくなら、大画面で確かめてみてはいかがでしょう?
『家族の肖像 デジタル完全修復版』(原題 Conversation Piece (1974))
監督・脚本:ルチーノ・ヴィスコンティ
出演:バート・ランカスター、ヘルムート・バーガー、シルヴァーナ・マンガーノ、ドミニク・サンダ、クラウディア・カルディナーレ ほか
配給:ザジフィルムズ
協力:フェンディジャパン
岩波ホール ほかにて絶賛上映中 他全国順次公開
(c)Minerva Pictures
Text. Midori Tokioka (@mdrtkk)