LIFE & CULTURE
始まりはコインローファーから。レザーブランド『REEL』のここだけの話
本記事では伝えきれなかった裏話・小話をご紹介。『REEL』デザイナーの宗片さんがレザーを始めたきっかけや、ブランドを語る上で欠かせない数々の人の繋がりなど沢山のお話を聞かせて頂きました。
最近人気だというインテリア雑貨も合わせてご紹介!
『REEL』が出来るまで

― 独立される前はメーカーに勤めていたとのことですが、それは革をやろうという目的で?
そうですね。父親が革職人なんですよ。まだ生きてますけど、亡くなった時にミシンだけが残るなぁと思って。
自分に技術が無くて、ミシンが残る。じゃあミシンを売って、家も売るか…ってなったら寂しいなって思ったんです。
それなら手に職を付けて、自分が革をやれるタイミングになったらミシンを貰おうかなって。
それでレザーの求人を探して、何も出来ない状態から7年間お世話になりました。
― 小さい頃はお父さんのお手伝いをしたり?
全くしてないですね!獣臭に加えて染料も顔料も使うので、小さい頃は特に「アトリエは臭いから行きたくない!」って思ってて(笑)
本当に興味が無くて、技術を学ぼうなんて思わなかったです。
でも振り返れば幼稚園の時のナップザックが革だったり…今思えばフルオーダーですよね(笑)当たり前のように日常に革がありました。
店舗内の工房からスタート

ブランド立ち上げ当初は祐天寺のセレクトショップ「feets」の店舗内に工房を構えていた『REEL』。その経緯を伺いました。
―「feets」の中に工房を持ったきっかけって?
元々OEMで「feets」のカバンとか作らせてもらってて、一緒にやってたんですよ。
それがだんだん軌道に乗ってきたので、自分で始めよう、個人でやってみようと思って。都内の不動産を周ったりして場所をずっと探していたんです。
そのことをオーナーに話したら「裏、空いてますよ」って言われて(笑)まさかそんなこと考えてなかったんですけど…。その時はソファとかハンガーラックとかが置いてある物置状態で、でも片付けたらいけるかな?と思って。
その時もここ(現在のアトリエ兼ショップ・tor)と同じくペンキ塗って、棚付けて、全部自分たちでやりましたね。
なので、きっかけと言えばオーナーの一言です。人の繋がりで広げていっている感じですね。
ブランドのアイコン・コインローファー

― 『REEL』で一番最初に作った物は?
この小銭入れですね。この形が出来てブランドを始めようって決めたので。
1セントをここ(アッパーのサドル部分)に挟んで、靴磨きのおじさんにお代を渡す、っていうアメリカのカルチャーが格好良いなと思っていて…コインローファーやペニーローファーの名前の由来でもあるんですけど。
そういう自分が好きな革靴のルーツを何か活かせないかなって考えた時に、小銭入れに落とし込んだこのデザインが出来ました。
お客さんと一緒に作り上げる

会話を通して1から物を作るフルオーダーサービスも人気(現在は休止中)。ブランドを広める1つのきっかけとなりました。
― 現在は休止中とのことですが、フルオーダーの話も聞きたくて。再開予定はありますか?
元々自分がやりたいこと、ブランドのコンセプトが「人とちゃんと繋がって物作りをしたい」ということなので、再開はしたいですね。
今はアトリエが出来たばかりでバタバタしていて…来年あたりにまた出来ればなぁと。
― フルオーダーの経験は定番商品を作る上で参考になりますか?
なります、なります!こういうお財布があったら良いのにな、って3人くらいに言われると「作っちゃおうかな〜」って(笑)
マネークリップとかもそうですね。日常で使えないと意味無いなって思ってるので、参考にさせてもらってます。
― シザーケースを多く作られている印象がありますが、これは口コミで?
口コミですね。一番最初に作ったのは3年くらい前で、私が髪を切ってもらってる美容師さんに「作れる?」って言われて作ったのが始まりでした。
それをInstagramに載せたら「私も同じ物が欲しい!」っていう人が凄く増えて、そこのサロンの方達も作ってくれて。美容師さんの横の繋がりで紹介して頂いたりして、だんだん広がっていった感じですね。
フルオーダーでしかやっていないので、実際にアトリエに来て頂いて。右利き・左利き、革の色、糸の色、何丁入れるか、ショルダーにするかとか…。
私は髪切ったことないから全然分からないんですけど(笑)、お話をする上でその人の要求に合わせています。
コロナ禍での需要


― コロナ禍で需要の変化はありましたか?
家で過ごすことが増えたのか、最近は日用品を求める方が多いですね。スリッパとかゴミ箱とか。
ゴミ箱って買い換えるタイミング無いじゃないですか。なので、人は格好良いゴミ箱を見つけた時に買い換えるのかなと思って…贅沢ですけどね。帽子とか靴下、雑誌を入れている方も多いみたいです。
こういったインテリア雑貨は今後増やしていきたいですね。
端材も活かす、サステナブルな姿勢

― Instagramで端材を使ったステッカーを見かけたのですが…
はい、「ステッカー作ったら良いじゃん!」って言われたのがきっかけで、友人と一緒にやっています。
これはボン君で…今5匹目ですね、全部友人の犬なんです。味が出てくるので、皆さん携帯の裏に貼ったりしているみたいで。

革の裁断も自分でやっているので、どうしても端っこが残るんですよ。
捨てるの嫌だな〜と思ってずっと取っておいたりしていて…。お洋服でも何でもそうですけど、物を作るってゴミが出るんですよね。
私はそんな物を作る仕事をしているけど、なるべくゴミを出さないように努力しています。
この取材を通して印象に残ったのは「人の繋がり」。革職人のお父さんを始めとした、現在の『REEL』を形作る様々な方たちのエピソードはとても興味深いものでした。
そして、この人の繋がりは宗片さんの気さくで飾らない人柄ゆえの物だなぁ…としみじみ。芯を通しながらも新しいことに挑戦していく柔軟な姿勢が素敵でした。