玉木朗の「名品は巡る」〜vol.1 バブアーのオイルドジャケット〜



「名品は巡る」

ファッションにおいて、いくつも存在する「名品」と呼ばれる品々。いま知りたいのは、そのウンチクではなく、実際に愛用してきた人ならではのストーリーだ。自他ともに認める“洋服バカ”として語ってくれるのは、三軒茶屋で「SEPTIS」を営む玉木朗氏。アメリカものにめっぽう目がない玉木氏ですが、第一回のテーマは意外にも〈バブアー〉。なんと去年でブランド創業125周年。






vol.1 バブアーのオイルドジャケット

 、紅葉だの木枯らし1号だのと言い出す晩秋辺りから初冬の頃になると、ボクの周囲には、業界の仲間やお店に来られるお客様達の間で、お約束のようにバブアーのジャケットを着た人達が増殖し始める。デニムにスウェットというアメカジベースやジャケパンにタイというドレスベースなど、スタイルはみんな本当に様々だけど、何だかここ数年の間にさらに増え続けているような気がするよ。そして最近はそれぞれのスタイルに合わせて上手に着こなしているヒトが多くなったなァと思う。

みんなバブアーが大好きなんだよ、かく言うボクも同じだけど。だっていかにも英国生まれを感じさせるちょっと高貴な佇まいの顔つきと、ディテールや機能がそのまま秀逸なデザインに落とし込まれているというのが、やっぱり男の服っぽくてカッコいいもんね。


こんな油揚げみたいな服は無理だ!

 クが初めてその存在を認識したのは、アメ横で働き始めた頃だけれど、当時アメ横の中では売られていなくてね。確か通りがかりの〇〇銃砲店だったと思うけどウィンドウで見た事があって、床屋さんみたいな変な名前の服だった。でもオリーブカラーのボディにブラウンのコーデュロイの衿、そしてグリーン系のタータンのライニングが、さすが紳士の国のアウターだといたく納得し、「いつかそのうちに…」などと思っていたんだよ。

でもある事があってブレーキが掛かっちゃった。発端は雑誌「CHECKMATE」のイラスト記事だったんだけど、生地にオイルを染み込ませてあるとかアザラシの獣油とか書いてあって「げェ~、こんな油揚げみたいな服、オレには無理だ!」本気でそう思った。そんな事もあってその後は興味を持つ事も、そして袖を通す事もなく何年か過ぎ、ボクの最初のバブアーは随分遅れた形で訪れる事になった。


当時の「Checkmate」。集めているつもりはないけど、雑誌は溜まっていく一方。



あの頃は“バーブァ”とも表記していた。ディテールが丁寧に書き込まれたイラスト記事。




初めてのバブアーは“オイルサーディンの真空パック”に

 6年頃のある時、先輩がボクの持っている廃番になっていた太コールのG-9をよこせと言い出して結局何かとトレードしようという事になり、先輩が大威張りで持って来たのがニューヨークの「ORVIS」で買ったというバブアーのジャケットだった。「ありゃァ~コレか」思ったけど、ほぼ押し付けられたような状態でボクのモノになってしまった。まだ新しくて指先がベタベタするし、機械油のような独特の香りもバッチリ健在だった。

だけどせっかくだからと思い、早速着て出かけたら一緒に電車に乗った友達は気のせいか何だか離れて立とうとするし、電車が混んでくるとオイルが他のヒトの洋服に付かないか気になって仕方がない。結局何度か着た後にたたんでゴミ袋に密封してしまった。

その後ロサンゼルスに引っ越す事になった時にカリフォルニアで必要なさそうなムートンとかブーツだとかのアイテムはまとめて実家に段ボールで送ったんだけど、密封されたバブアーもその中に紛れて、何年も忘却の彼方に追いやられていたんだよ。

そしてゴミ袋のままぺっちゃんこになっている状態で再発見されたのは、なんと21世紀に入ってからで、タイムカプセル状態だった。恐る恐る中を見てみたら機械油の香りはバッチリ健在だったけど、何だか正体不明の粉みたいなのがいっぱい付いた状態で固く貼り合わせたみたいになっていて、何だかオイルサーディンの真空パックみたいだった。


イチかバチかの洗濯。ドライな感じがお気に入り

 それで、どうせ忘れていたんだからこの際どうなってもいいやと思い、イチかバチかで台所用の洗剤をたっぷり入れて洗濯機で長時間回してみることにした。回し始めてしばらく経った頃ドラムの中を覗きに行ったら想像をはるかに超えたエグい色の水がグルグル回っていて「あ~ァ、こりゃアウトだわ」思ったけど、とにかく最期を見届ける事にした。

ところがいざ洗濯が終わって出してみると意外にキレイになっていて全体的に白っぽく色も落ち、なかなか良い顔つきになっていた。「やったね~セーフじゃん」思いながら乾かしてみるとオイル分はほとんど抜けて匂いもなくなり、その表面がドライな感じがボクはすっかり気に入ってしまった。実はそれからだよ、ボクが偉そうに着るようになったのは。

その後、すっかり味をしめたボクはバブアーを買うとまず洗濯機で洗う事にしている(真似しなくていいからね)。つい先日発売された125周年記念モデルも早速洗濯機で洗ったら実に良い顔つきになってくれて、今とっても気に入って着ているよ。


“ゴミ袋行き”から復活した初代ではなく、これは2代目。元々の色はブラックだが、洗い込んでグレーのような色合いに。



125周年記念モデルももちろん洗濯済みだ。SEPTISでも現在販売中。




使い込んだほうが断然かっこいい

 くまでボクの私見だけど、元々バブアーのジャケットというのはカサや長靴と同じ道具としての立ち位置が基本だと思っている。あまりピカピカの新品よりは少し使い込んだ顔つきの方が逆に風格があって、断然カッコいいと思うんだよ。

そして冬場はともすれば全体的に暗く渋めになりがちなコーディネートもインナーに発色の良いUKニット等を差し色にすると全体的なトーンにメリハリが付いてバブアーをもっとステキに見せてくれると思う。一度試してみてはどうだろうか。

125周年記念モデルのビデイルを羽織って。イエローのシェットランドニットは〈ピーターバランス〉のもの。



SELECT STORE SEPTIS
住所:東京都世田谷区三軒茶屋1-41-13
営業時間:13:00-20:00 (土日祝:12:00-19:00)
定休日:水曜日・第三火曜日(祝日の場合は営業)


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