玉木朗の「名品は巡る」〜vol.2 プロッパーの軍パン〜



「名品は巡る」

ファッションにおいて、いくつも存在する「名品」と呼ばれる品々。いま知りたいのは、そのウンチクではなく、実際に愛用してきた人ならではのストーリーだ。自他ともに認める“洋服バカ”として語ってくれるのは、三軒茶屋で「セプティズ」を営む玉木朗さん。第2回目のテーマは「軍パン」です。実は、玉木さんの“軍パンデビュー”は意外なタイミングで訪れたよう。




セプティズ 代表 玉木 朗さん


1955年京都市出身。18歳の時に上京。毎日好きな洋服に触れられるという理由から、当時大井町にあった「みどりや(現キャシディ)」の近所に住み、アメ横にも通い詰める。やがて好きが高じてアメ横の「る~ふ」に入社。退社後、輸入商社勤務を経て、2002年に三軒茶屋にセレクトショップ「セプティズ」をオープン。






vol.2 プロッパーの軍パン


 流行りのユル目のスタイルとも相性がいいせいか、オリーブカラーの6ポケットに代表されるような、いわゆる軍パンを穿いている人がずい分増えた。新たなブランドやタイプも増え、この何年かの間に今では堂々とメンズボトムの定番になっているもんね。

軍パンは本来戦闘用だからデザインは男っぽい。ポケットを始め、ディテールもすべて実用重視で機能的だし、とにかく丈夫で楽チン。洗いざらしで全然OKだ。

中でも、60年代に米軍が熱帯地域での野戦用に開発したコットンのリップストップ素材のジャングルファティーグと呼ばれるタイプが、デザイン的には一番完成度が高いと思うんだよ(あくまでボクの私見ね)。オリジナルも入手は可能だけど、それにほぼ近い〈プロッパー〉のモノがコスパにも優れていて、ビギナーでも十分カッコよく穿けると思う。


デザインが秀逸だと思っているジャングルファティーグパンツ。ともにコットンのリップストップ素材。
左:60年代のジャングルファティーグパンツのオリジナル。
右:手軽に入手しやすいのは〈プロッパー〉。オリジナルよりやや細身。



小学生の時から“アメリカ軍”に夢中

もそもボクが軍モノに興味を持ったのは小学生の頃だった。60年代に放映されていたテレビ番組で「コンバット」というアメリカのドラマがきっかけ。舞台は大戦中のヨーロッパで、戦記物というよりはヒューマンドラマだった。毎週夜8時から家族全員で観ていたよ。

中でも、ビック・モロー扮するサンダース軍曹が大人気だったから、子供の頃戦争ごっこをすると誰もがなりたがったのはサンダース軍曹。それほどの人気番組だったけど、内容はアメリカ軍が常に正義の味方で、ドイツ軍は悪者というプロパガンダのような番組だった。純粋無垢な小学生だったボクは、否が応でも一番強くてカッコいいのはアメリカ軍だと見事に刷り込まれてしまった。だから軍服はもちろんの事、自動小銃などの装備や無線機、ジープまで欲しくてね。

だけど知識が全然ないから、後になって高校生になった時に、“メンクラ”で見たアーミージャケットが欲しくても、結局どこに行けば買えるのかも分からなかったんだ。


「コンバット」は1962年から1967年にかけて、毎週水曜日20時から放映された高視聴率ドラマ



メンズクラブ、略して“メンクラ”の1972年4月号。ボクは当時高校1年生



同号の中面のスタイリングページ。このM-65フィールドジャケットの2ndモデルが欲しかった!



アメ横で学んだミリタリーのいろは

の後、いわゆるミリタリーのアイテムをアメリカンスタイルにエッセンスとして取り入れる、というのを覚えたのはアメ横に通うようになってからだった。当時はベトナム戦争が終結して間もない頃。アメ横には放出品を山と積み上げたお店が何軒か存在していたんだ。

そして76年に公開されたのが映画「タクシードライバー」。すっかり興奮して、映画館の宣伝ビラを手に「中田商店」に行った。ビラの写真を指差して「これと同じジャケットありますか?」と尋ねて、初めてそれらしいアイテムを購入したのがM-65フィールドジャケットだったんだよ。「中古と新品がありますけど?」。そう言われて、ボクは抵抗感のない新品の方を購入した。

「る~ふ(※)」に入ってからも「中田商店」や「守屋商店」に顔を出しては、ミルスペックラベルの見方を教わったり、スタッフの着こなしを真似したりしていた。だけどアウターには興味を持っても、パンツに興味を持った事は一度もなかったんだよ。

※アメ横がまだバラックだった頃から、アメリカ製の直輸入品が手に入る数少ない店として「る~ふ」と「ミウラ(現シップス)」が隣合わせに存在していた。当時100%アメリカ製を貫く「ミウラ」とは対照的に、「る~ふ」はヨーロッパものにも滅法強かった。


アメ横で教わったミルスペックタグの見方。アイテムの出自が分かる様々な情報が凝縮されている。このラベルなら、納入年は1968年で、サプライヤーはWINFIELD社だ(赤線部分)



“軍パンデビュー”は突然に

る日、「る~ふ」の事務所から「これからコンバースの大量入荷があるんだけど手が足りないから、こっちに来てくれる?」って。

タイミングが悪いというか、ちょうどその日は買ったばかりの〈バリーブリッケン〉のウールトラウザーに〈フローシャイム〉のコードバンというご自慢のいで立ち。仕方がないので屋根裏に放り上げてあった後輩の〈トップサイダー〉を拝借し、思いついたのが中田商店に積まれていたジャングルファティーグのパンツだった。

あわてて買いに行って、早速穿いてみたら思わず「何ィ~?この太さ!」。「なんか袋を穿いてるみたいっすね、片側に足が2本とも入りますよ!」とも言われたよ。考えてみたらアイビーの洗礼を受けて以来、そんなに太いパンツを一度も穿いた事がなかったからね。

その強烈な違和感を引きずったまま、「でもアメリカの軍パンだから、絶対にカッコいいに決まってる!」と自分に言い聞かせて、汗だくでコンバースと格闘したという、楽しくもない軍パンのデビューだった。


「キャシディ」で教えてもらったのが〈プロッパー〉

 ところで、最初に紹介した〈プロッパー〉は1967年に設立された大手米軍納入業者のひとつ。様々なミリタリーウェアやギアを納入してきた実績を持っていて…と、ここまでエラそうに書いておいて、実は白状すると、昨年ボクにこのパンツの事を教えてくれたのは原宿「キャシディ」の八木沢さんなんだ。

お店に行った時に八木沢さんが穿き込んだ自分の〈プロッパー〉の軍パンをディスプレイしているのを見て、その面構えがとても気に入った。「あ、カッコいい!さすが八木沢さん!」。それから、うちでも取り扱いを始めたというのが真相だよ。


新品の〈プロッパー〉の正面。ここから穿き込むと味が出てくる



より日本人の体型に合わせた〈バーンストーマー〉もおすすめ。独自の技術でスタイリッシュなシルエットを実現

左:ドレスオーバーファティーグパンツ
右:ドレスファティーグパンツ




トップスにはシンプルなアイテムを合わせて

 これから軍パンを穿いてみようと思うヒトは、デザインの主張が強いので、トップスにあまり凝ったデザインのアイテムを持ってこないで、出来るだけシンプルなアウターやカットソーを合わせてみることから始めるといいと思う。

そしてパンツと同系色のトップスは避ける。白のロンTでも十分サマになってくれるからね。そしてミリタリーアイテムは決して上下トータルで組み合わせないように。マニアックな別のテイストになっちゃうからね。

〈プロッパー〉をメインにした、ボクのデニムミックススタイル。ミリタリーアイテムとデニムは相性抜群


シャツ/WRANGLER ¥11,000
ニット/FILEUSE D'ARVO ¥14,960
パンツ/PROPPER ¥8,910
シューズ/G.H.BASS ¥29,916
バッグ/MIS ¥23,980

スタッフの白木はオリジナルのジャングルファティーグパンツでコーディネート。プレッピースタイルでまとめてくれた


ベスト/JAMES CHARLOTTE ¥17,820
シャツ/SEPTIS ORIGINAL ¥11,880
タイ/BENTLEY CRAVATS ¥11,880
パンツ/U.S.ARMY(JUNGLE FATIGUE) ¥24,840
シューズ/G.H.BASS×SEPTIS ¥25,300


SELECT STORE SEPTIS
住所:東京都世田谷区三軒茶屋1-41-13
営業時間:13:00-20:00 (土日祝:12:00-19:00)
定休日:水曜日・第三火曜日(祝日の場合は営業)


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