洋服ではなく『スタイル』を売る。祐天寺のANALOGICが今セレクトショップをオープンしたワケ。

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祐天寺の居酒屋、雑貨屋、洋服屋。

「モノを売りたいんじゃなくて“スタイル”を売りたいんですよね。」と言ったのは、渡邊さん。モノとモノとを組み合わせたコーディネートとしてのスタイルではなく、その人を表現するものとしての洋服=スタイルを提供する、今年祐天寺にオープンした ANALOGIC のオーナーです。

ではその渡邊さんのスタイルとはどんなスタイルなのか。

ANALOGICを構えるのは、渋谷まで電車で6分という立地にありながら、気取らないゆったりとした時間が流れる東急東横線・祐天寺。セレクトするアイテムは「なんでもいいんです」とも言う、実に渡邊さんらしい街です。さて、渡邊さんらしい街で、渡邊さんらしい服を提供するスタイルについて、前職での経験から聞いてみました。

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洋服屋の技術を提供する。


– さっそくですが、ANALOGICさんが誕生する以前には何をされていたのですか?

昔から洋服には興味があって高校を卒業するときには洋服屋になろうとは思っていたんですけど、そもそもアパレル業界にどうやって入るのか分からなかったんです(笑)アパレル業界に入ったのも当時通っていたSHIPSに友人の紹介で声を掛けられたのが始まりで。それが何なのか分からないけど、その感覚は今でも持っていて…。未だにアパレル業界に自分がいるっていうのがしっくりこないんですよ(笑)でもそれから17年間SHIPSでお世話になりましたね。

– アパレル業界にいる感覚が無いってのは面白いですね。自分に近すぎるってことですかね。そして入社前には独立心があったけど、結果17年続けられたと。

自分でやるってことが薄れていってしまったんですよね。「仕入れとか色々あって、俺には難しいな」って。最初は仙台のSHIPSにアルバイトとして入社したんですけど、社員として東京に異動、その後札幌に8〜9年。それでまた東京の本社に戻って3年いましたね。

– 一度無くしたはずの独立心がまた芽生えて東京での3年目、どのタイミングで独立を決意されたんですか?

札幌からこっちに帰ってくるタイミングではもうすでにやりたいなと考えていて。でも本社での所属がやったことない販売促進の部署だったので、やってみる価値はあるかなと思ってやることにしたんです。その時の経験は今かなり活きてます。でもそれはそれで楽しかったんですけど、やっぱり…っていうのが大きかったですね。

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– モノを直接触れることもできるし、お客さんにも直接伝えることもできますよね。今ってSHIPSさんとはテイストが違う洋服を扱っているじゃないですか。その移行ってどうやって起こったんですか?

多分僕って、SHIPSにいる頃からSHIPSっぽくないんですよ(笑)でも僕は洋服屋の技術としてこんな成りをしててもスーツの丈上げとか袖丈の詰めとかできなきゃいけないものだと思ってます。どんな格好したって関係ないじゃんって。世の中で腰履きが流行ってるとき、アンダーウェアを見せるのが腰履きじゃないと思ってましたね。落として履いた時のクッションのつき方だったりシルエットで見せるものだと。だからこそ今主流の丈を短く上げる時もロールアップするときも1回なのか2回なのかはこだわるべきだと思います。その見え方の技術を提供して納得してくれればお客さんだって買ってくれるはずなんです。

− 洋服屋の方達がかっこよく見えるのもそこにあって、だからこそ接客にも説得力が生まれるように思います。

そうですそうです。特にSHIPSではトラッドが基本でしたから。トラッドってすごく難しいんですよね。なにか一つ外すとトラッドじゃなくなるようなものがトラッドなんですよ。プレップもそうですけど、それって変えちゃいけないものというか、変わらないもののような気がします。トラッド風、プレップ風、にはなっても本当のトラッドの人から見るとどこか違う。ハズしてるつもりが、ハズレてるになってしまいますよね。

− 無防備では入り込めない領域のイメージがあります(笑)ネオトラッドもクソもないよってことですよね。でも今ANALOGICさんではまた違った趣の洋服を扱っていると。

言ってしまったら扱うものは何でもいいんですよ。白いTシャツとデニムだけでも別に構わないんです。「じゃー、どう着る?どう着せる?」っていうところが問題で。要は人となりと洋服との関係が問題です。着るのがどのアイテム、ブランドであろうとその人を自然と表現することになるんです。だからモノを売るというよりかは“スタイル”を売りたいんですよね。こういうものも着れるんですよってことを教えたい。似合わないと思っているのは、それを着たくないか、着方がわからない、着てるイメージがわかないからだと思います。

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“ファッションは自由だ”?


− 食わず嫌いですよね。お店に立っているプロの方に言われるとなんだか似合ってるような気になるという体験は大事にしてます。その意味でSHIPSでは枠を広げてもらったんですね。

そうです。それに比べて今自分が欲しいものとか自分が着てるものは四隅のほうにあるものなのかもしれません。少数的なものというか、数が限られたものというか。そこばっかりに目がいっちゃうんですよね。まぁそういうものが好きなんでしょうね。

− もうそこは趣味というか…。

そうなっちゃいますね(笑)でも枠の中であえて四隅の部分を扱っているのはクリエイティブになることだと思うんです。枠があって制限されるからこそ自分で考えるってことが出てくるんですよ。クリエイトになるってことは、狭い状況の中で最大限四隅を突つくっていうか。腕試しみたいなもんです。ファッションを楽しむってそういうことだと思います。

− いやー、勉強になります。それでいくと“ファッションは自由だ”という言葉が理解されている意味も怪しくなってきますね。それって何も制限のないところで自由だって理解されてるような気がして。でも何かしらの制限がなきゃ自由っていう言葉は出てこないじゃないですか。

僕もそう思いますよ。さっき言った「四隅を突つく」というのもそういうことで、枠の中で自分を表現するために考えることが自由であることの意味なんだと思います。クリエイティブになるってことは自由とイコールなんだと思います。

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ふらっと入って、モノが良いから買う“スタイル”。


− 世の中への提言になりましたね(笑)ところでなぜ祐天寺にANALOGICを構えようと思ったのですか?

ゆくゆくは古着をもっと置きたいと考えているので東横のラインの中でも古着が馴染む祐天寺がいいかな?と思って決めました。あとは駒沢通りが良くて。車を横付けして買い物ができる場所がよかったんです。なんか電車で動く人は車で行ける場所まで行かないじゃないですか。その人たちのために駒沢通りにしたっていうのが一つと、あとは生活圏が良かったんですよ。居酒屋とか、カフェとか、雑貨屋とか、っていう並びにうちが欲しかったんです。お客さんが「その裏に住んでます」みたいな風景っていいなーと思って。

− 生活の一部の洋服屋、みたいな。街によってその洋服の見せ方も見え方も買い方も何もかも変わりますからね。

そうですね。でももっと言えばモノを見て買ってほしいっていうか。ブランドで買うのもわかりますが、洋服を着てみて自分が良いと思うかどうかだけだと思うんです。それがなぜ良いのか、どう良いのかっていうのを買うにあたって口には出さなくても全然いいんです。そういう買い物をしてもらうと一番うれしいですね。買う気もないのに買ってしまったみたいな。

− もちろん今置いている洋服はそうに決まっていると思うのですが、渡邊さんにとって良いと思うものはどんなものですか?

これまた言ってしまったら扱うものはなんでもいいんです。って言うのはちょっと大袈裟ですけど今置いているものもほとんどが縁で取り扱いが決まって。だから良いと思うのは決まってなくて。それも縁で決まっていくんじゃないですか?自分で着て・見て・触って納得したものをお客様に提供したい。それはスタイルも一緒です。

− 言われてみれば、たしかにそうかもしれません。衝動買いもその一つの現象ですよね。

そのテンションって大事ですよね。この物件もたまたま見つけたのがきっかけです。

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− 物件はどうやって決めたんですか?

駒沢通りという条件で駒沢の方までいくつか当たりました。ここ6坪なんですけど、本当はもうちょっと広い場所がよかった…。内装はこれを着て自分で天井を抜いて壊しました(笑)あとハケで壁に色塗ったりとか(笑)

昔アルバイトで土方や家の基礎とか少しやったことがあって、なんとなく知ってたんですよ。だからこれ抜いたらこうなるだろうなっていうイメージはあって。職人さんを使うとお金掛かりますしね。ネペンテスの内装をやってるグーファクトリーさんにアドバイスもらったり、内装関係の友人に聞きながら電気以外はほとんど自分でやりました。友達にペンキ塗り手伝ってもらったりしながら。

− そこで踏ん切り付くのがすごいのですが(笑)

一応、内装業をやってる友達にも見てもらいながらやりましたね。それからはタガネとハンマーで壁も削って。1月でまだお店の暖房も付いてない時期だったので電気ストーブを置きながら(笑)

− それは孤独な戦いですね(笑)2月3日にオープンして数ヶ月ですが、どんなお客さんが集まってますか?

ネットで見て来てくれるお客さんもですし、自転車、車を横付けするお客さんも多いですね。この前なんかは恰幅のいい70歳ぐらいの方がいらっしゃいました。「大きいシャツない?」って言われて、「こちらなら大きいですよ。白と黒ありますが?」「迷ったら両方」って言われて(笑)

さらにお会計前に「このパンツもおれ履けるよね?」って。結果15万円くらい買っていかれて。それで外みたらキャデラックがドーッッンって横付けされてて。なるほどねって思いましたね。自転車で何回も通ってくれる方もPOST OVER ALLSとかビンテージのメガネとかを買ってくれてますね。

− それは渡邊さんの「扱うものはなんでもいいんです。」にもつながりますよね。買う側のふらっと入ってお店で見つけたものが良い=なんでもいい、と、売る側のなんでもいいがつながったわけですから。不思議ですね。

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リアルがカッコイイ=形あるものは壊れる。


− 渡邊さんのスタイルを洋服で表すとして、どんなものがありますか?

基本的に僕は質が良くてディテールが凝っているカジュアルなウェアが好きなんです。あと逆にチープなモノも好きですね。夏はHanesとか全然着ますし。

− ずっと着てるものは何ですか?

高校生の時からずっと穿いてるデニムとか(笑)あとはコンバースのウェポンは買い替えたりしてますね。ヴァンズのオールドスクールは特に好きです。

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− 渡邊さんっぽいですね(笑)基本的にスニーカーが渡邊さんの“スタイル”にあるんですか?

あとはブーツも短靴も、ってなんでも履きますね(笑)レッドウィング100周年の編み上げブーツは全然気に入ってなかったんですけど雨の日にがっちゃがちゃに履いていたら味が出てきて。今は割と大切に履いてます。はは(笑)

− それにはどんな影響が?

ヴァンズのオールドスクールは黒のスウェードとグリーンのスウェードを履いていたら、左右づつ壊れて。なんとなくネガティブ履きしてみたらしっくりきて。ずっとやってますね。多分あっちのスケーターがやってるのってそういうことで、片方だけパクったとかスケートで右の小指部分だけ破れたから同型の別色をあてたとかだと思うんですよ。それがリアルでカッコイイなーと思って。

− あいつらの飾らなさ、カッコイイですよね。パンツが9部丈なのも足が長いからあーなってるっていう。

最近もたまたま運悪くリーバイスの2ndの肩を破ってしまったんですが、「これで俺のものになったな」って思いましたね。

形あるもの壊れると思ってるんで(笑)ブーツだって茶碗だって壊れるじゃないですか。だからあんまり悲しい気持ちにならないんですよね。捨てるのも生かすのも自分なのかなって。お店も同じ感覚なんだと思いますよ。何を並べたっていいって思ってますから。これじゃなきゃいけないってないんですよ。固執してないです。

− 渡邊さんの売りたい“スタイル”がなんとなく理解できたような気がします。本日はありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

ANALOGIC


東京都目黒区中目黒5-28-14セレーヌ祐天寺
Tel.03-6451-0291
Open.13:00-21:00(定休日.木)


Photo.Yuya Iwasaki , Text.Shunsuke Mizoguchi



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