VETEMENTSもしくはVÊTEMENTSの話《水曜のケセラセラ》

こんにちは、ROBE編集長のAzuです。連載《水曜のケセラセラ》2回目になりました。初回にもかかわらず前回はぶっ飛んだ恋の話をしてしまい、周りからそこそこ反響いただいたのですが、改めて読み返すと恥ずかしいです。さて、今回はとても真面目に。どうぞ宜しくお願いします。

 

VETEMENTSという文字を見て「おや」と思った方はきっとコレクション最前線をチェックしているモードラバー、もしくはフランス語履修者でしょう。今日は二つのVE(Ê)TEMENTSについて、そして「ラグジュアリーの正体とは何か」の話。

VETEMENTSは「ブランド」


今、ファッション業界に彗星の如く現れカルト的人気を誇るブランドがあります。それが「VETEMENTS(ヴェトモン)」。前回、私の背伸び服だと紹介した「Maison Martin Margiela」や「Louis Vuitton」でデザイナーを務めた経験もある、世界が注目する若きデザイナー、デムナ・ヴァザリアが手掛けるブランドです。

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このブランドのシグネチャーといえば大胆にカットしたデニム。複数のデニムを切り貼りしたような複雑で構築的なデザインに世界中のファッショニスタたちが魅了され、3月のパリコレ最前線でもNo.1のおかぶりアイテムとなっていました。私も帰国して速攻デニムを切り裂いた。

そしてもう一つのHitアイテムがこのオーバーサイズレインコート。ストリートファッションを好む若者の間で人気のアイテムです。ちなみに雨が降り続いていた3月のパリコレ会場では、ストリートスナップカメラマンたちの「本気レインコート」として大活躍していました。これぞ本来の使い方。

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これで6,7万円ほどするらしい(海外通販サイトではその人気故に価格が上がって、これくらいの値段に。定価は1.6万円前後だそう。)それでも、ソールドアウト続出のカルト的人気。定番のデニムやスウェットなどは上質な生地を使用してはいるんだけど、ここまでの高値がつくのはなぜか。その秘密は需要と供給のバランスにある、と言うのをこのインタビュー記事で読みました。(そういえば政治経済の授業でそんなグラフやったなぁ)

「欲しい!」と思ってる人の数よりちょっと少ない量を用意すれば在庫にもならずセールにかかってブランド力を下げることもないし、「希少性」も保てる。その希少性がまたブランド力へと変わり、人々の欲求を産み出す...欲しいものは何がなんでも手に入れたい、強欲なファッショニスタたちの『want!』をうまく循環させているなーと。

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ここで考えさせられたのが、「ラグジュアリーの正体」について。(特にファッションにおいては)高価=ラグジュアリーと思われがちだけど、彼ら(ブランドはただデザインをする箱でなく、関わる人たちそのもの。VETEMENTSは生き物なのだと記事中で語ってます。)が言うラグジュアリーというのは華美な装飾や最高級の素材を使うことではない。世でいう「ラグジュアリーブランド」は世界中どこでも手に入ってしまう「手に届くもの」だから、彼らにとってのラグジュアリーではないそう。「欲しくて欲しくてやっと手に入れた服は大切に着るでしょ?」ということ主張している。

じゃあ、ラグジュアリーって、何なんだ??VETEMENTS的に言うと手に入りづらいこと、希少性こそがラグジュアリーなのかしら??

VÊTEMENTSは「洋服」


ここでもう一つのヴェトモン、「VÊTEMENTS」の話に。フランス語で「洋服」という意味の名詞です。ブランドの「VETEMENTS」もそこから名前がきているようだけど、いろいろな事情があって普通のEにしたのでしょう。(変換とか面倒だよね)

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これは通称「VÊTEMENTS BOX」、と言うかは知らないけど、パリの街中でよく見かける設備です。巨大なポストのようなグレーの体には「VÊTEMENTS」の文字。正体は、使わなくなった服や靴、カバンなどの回収ボックスです。

レースの街カレーに行った時も見つけました。他の街でもよく見かけるので、フランスでVÊTEMENTSの再利用はだいぶ普及している様子。回収された物はリサイクルショップで売られたり、解体して他の資材になったり、9割は何かの形で再利用されています。しかも回収作業や仕分け工場などの職は、社会的立場が弱い人に優先して与えているみたい。ポンとリサイクルに出すだけで知らぬ間に社会貢献になっている仕組みです。

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ラグジュアリーの正体は


この「VÊTEMENTS BOX」には、様々なヴェトモンが入っています。それはファストファッションブランドで買った3回しか着てない服かもしれないし、古着屋で運命的に出会って愛用していたボロボロのニットかもしれない。(実際私は留学中にずっと着ていた大事な服を寄付した)

この服たちは、果たしてラグジュアリーとは言えないんだろうか?希少性という点では、この箱に入っている服たちの方がよっぽどストーリーにまみれた暑苦しく、唯一無二のヴェトモンたちかもしれないのに。

VETEMENTSが考えるように、ようやく手に入れたから大切に着続ける、それがラグジュアリーだということにはちょっと疑問。だってその希少性は計算して作られたものだから。でも、人々にとって洋服、ファッションの価値がどこにあるのかを賢く理解しているのがVETEMENTSというブランドなのかなと思ったり。「なんかわかんないけどスキ!」という感性、「手に入らないものが欲しいわ!」ってオトメゴコロ、弄ばれちゃってるのかも!

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ラグジュアリーの正体とは何か」は、人によって違うでしょう。一瞬の夢を見せてくれる体験であったり、日々を心地よいペースで生きることだったり。私にとって、ことファッションにおいては、「語れるストーリーを持つこと」です。服という、日常に寄り添うものだからこそ、いちいち立ち止まって身につける意味を考える。なんで買ったんだっけ?なんで大事なんだっけ?そうした心の余裕や感情の豊かさ、そこから生まれるストーリーがラグジュアリーなんじゃないかな、と思うのです。

例えば古着屋で見つけて思わず見とれた、スカーフをまみれのマネキン。ここから一枚選んで身につけたとして、語れるストーリーは、すでにあるはず。

Text. Azu Satoh



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