繊維商社・豊島とスタイラーが、協業の先に見るファッションの未来

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1841年創業の繊維商社、豊島がファッション関連のスタートアップ企業を支援するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)という新たな取り組みをスタート。モノ作りのプロフェッショナル集団として、多くの有力なファッションブランドやリテーラーに年間1億枚以上のウェアを供給してきた同社はなぜ今CVCを始め、スタイラーに出資したのか?豊島半七・豊島社長と、スタイラーの小関翼の対談から、ファッションの未来を考える。

金融出身から見た、アパレル産業の課題


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お二人とも金融機関やAmazonのようなネット通販といったアパレル産業外から業界に入られました。今のアパレル産業全体をどう感じられていますか?

小関:アパレル業界は非常にマーケットサイズが大きい業界です。ただし、他の消費財を扱う業界と同様に市場規模が縮小しています。これは他の業界でも起こっていることなので、マクロ経済のような外部環境に寄るところが大きいのですが、日本人は真面目なのでわりと自分たちの業界内のせいだと思って苦しんでいるところがありますね。

豊島:仕事柄、海外の人とも情報を共有しています。日本以外の市場、例えばアジアだと日本と真逆で普通に市場が拡大しているんですよね。アパレルで仕事をしている人も儲かるから始めている人が多い。日本だけマインドや数字が逆の方向を向いているので、世界からは日本が、日本からは世界が分かりにくいんです。

そういった観点では、物作りを支えている豊島からは、日本のファッション市場がより良く見えるのかもしれません。

豊島:かつてパパママストアと言われる個人商店から、量販店、モール、最近ではEコマースも加わりました。時代に合わせて、市場の変化に対応してビジネスを伸ばしてきたんです。日本のアパレル市場は90年代と比較して縮小しているとはいえ、10兆円近い巨大な市場です。年1億枚のアパレル製品を供給する弊社でも、占めているのは1000億円ほどで、シェアで言うと1%にも満たないほどです。まだ、商売の開拓余地は大きいと考えています。ただし、これまでのやり方では上手くいかないことを実感しています。

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その理由とは何ですか?

豊島:最大の理由は、消費者が大きく変化したことです。所得の格差が広がる中で、消費の選択肢も増え、ファッション消費への意欲が上向かなくなっています。消費全体が上向く中でも衣料品だけがデフレから脱却していないのも、これまでのやり方と消費者のニーズのミスマッチが原因だと考えています。

本当に消費者が求めている商品を提案できていないと?

豊島:弊社のビジネスモデルの基本は卸業です。供給した製品の情報はあっても、最終消費者の情報は持っていません。消費者が本当に求めている製品は何か。サプライヤーとして、その情報を待たずに商品を作り続けているジレンマへの危機感は強くなりました。

シームレスに物を買えるように設計することが重要


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小関社長は消費者ニーズと売り方のミスマッチをどのようにお考えですか?

小関:日本はサプライサイドの議論に終始しがちです。最初にマクロ経済がチラっと出ましたが、むしろデマンドサイドが重要です。ミクロ的な企業の意思決定でも、最近デザインシンキングが注目されています。これは人間やユーザーを起点とした考え方です。しかし、顧客に対し欲しいものをストレスなく購入できるように体験から設計することは商売の本質ではないでしょうか。

スタイラー社は、その課題を解決するためにどういったことを目指しているのでしょう?

小関:僕らがテーマにしているのは、ライフスタイル分野に未来の購買体験を提供することです。ファッション、不動産、旅行などを一括してライフスタイルとしていますが、要は消費の意思決定に影響を及ぼす変数が多く、売り手と買い手に情報差生まれがちなジャンルです。こういった市場では、ユーザーは賢いので変数を一つに絞り込む単純化戦略を取ったり、そもそも市場が成立しにくいのでオフラインへの送客がメインになります。例えば、大手のECでも流通している服の平均単価は3,000円ほどです。これは先ほどの言ったような社会科学的帰結です。「白いシャツ」と検索しても、似たような白いシャツが大量に出てしまう。そうなると、価格だけが判断の基準になって、低価格に寄っていくんですね。

一方、ウェブからオフラインの流れも問題があります。ウェブ上での商品の情報収集から店頭での接客、購入に至る一連のプロセスが、それぞれ断絶されているんですね。消費者がウェブで見たアイテムを自分で調べ、お店に問い合わせ、ようやく見つけたとしても、店頭の販売員にはそうした情報は共有されず、消費者にとってはまたゼロから自分のニーズを説明することになる。FACYが目指しているのは、そうしたプロセスをユーザーを軸にデザインし直すことです。一連のプロセスを、サービスを通じてシームレスに繋げられれば、これまで手付かずだったライフスタイル分野での生活圏や趣味嗜好といった膨大なデータを得ることができます。

豊島:私たちがスタイラー社への出資を決めた理由は、まさにこの点です。スタイラー社と連携すれば、弊社の取引先であるアパレルやリテーラーでも持っていない、最終消費者の本当のニーズと製品をセットで提案することも可能になります。個人的には、インターネットによる情報革命がもたらしたのは、売り手と買い手の垣根がなくなったことを(だと)感じています。極論すれば、サプライヤーである我々も一消費者としての感覚を持つ必要があります。消費者が本当に欲しいものを作れなければ、結局は価格競争に陥ってしまう実感もあります。現在は、素材での他社との差別化を全社的に取り組んでいますが、そういった取り組みも最終消費者に伝わらなければ、言葉遊びに過ぎません。

本業を強化するためにも、ユーザー中心の新たなビジネスと協業していく必要がある


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改めて、CVCの狙いを伺えますか?

豊島:繰り返しになりますが、今後の市場を考えると、必ずしも弊社が今まで取り引きを積み重ねきた商慣習とは別の切り口が必要だと考えました。CVCの構想自体は2〜3年前から温めてきたことです。当時は今ほどファッションとITが組み合わさった“ファッションテック”が盛り上がっていなかったですが、本業である卸業を強化するためにも、ユーザー中心の新たなビジネスと協業していく必要を感じていました。

小関:ユーザー中心のバリューチェーン構築を目指す僕らにとっても、一緒に商品開発と生産をできるパートナーシップには、非常にメリットがありました。冒頭にも話しましたが、海外ではファッションが日本とは逆に成長産業です。台湾でサービスを開始する計画もあり、海外での活動が増えています。国内外でサポートが受けられるのは助かりますね。

豊島:アジアの場合は、日本の数十年で積み上げてきた発展を、ここ数年で遂げたようなところもあります。有名な話ですが、中国はキャッシュレスが当たり前です。ビジネスを行うのに、日本と同じ発想である必要はありません。その観点では、スタイラー社との取り組みも、海外の方が早く成長する可能性も感じています。CVCに関しても、店頭とECのオムニチャネル化対応を求められるシステム開発負担が大きいと、感じていらっしゃる取引先も多いです。今後はITシステムに関しても、プラットフォームなどを通じた何らかの支援をしていきたいですね。

TOYOSHIMA | 豊島株式会社


1841年に初代豊島半七が繊維問屋の「綿屋半七」を創業。1918年山一商店設立、42年豊島に改称。170有余年の歴史の中で、時代の変化に応じて事業領域を拡充し、現在では原糸・原料から最終製品まで、総合的に取り扱う繊維商社として発展を遂げる。17年1月にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立し、ファッション関連のスタートアップ企業の支援をスタート。

STYLER Inc. | スタイラー株式会社


2015年3月に小関翼(代表取締役CEO)が“テクノロジーによって、ユーザーに最も優れたライフスタイル購買体験を届ける”ことを掲げ、設立。アパレル店舗の販売員がアプリを通じて接客するO2Oアプリ「スタイラー(現FACY)をリリース。現在FACYは250店舗が活用。台湾でも2017年1月にサービス展開予定。


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