「勝手にふるえてろ」は生きとし生けるわたしたちレディの物語【洒脱なレディ論】

クリスマス直前の12月23日に公開される映画『勝手にふるえてろ』は、生きとし生けるわたしたちレディの物語。いくら評論家が言葉を並べて評したって、結局は前述の言葉に尽きるのかもしれない。これまでわたしたちが恋に破れ実らせ(また破れ)したのであれば(その上多少でもこじらせたのならば尚更)主人公〈ヨシカ〉のどこかにきっと、わたしたちは “自分” を見つけてしまうはずだから。

ふたりの彼氏(?)で揺れる主人公〈ヨシカ〉の暴走ラブコメディ


私には彼氏が2人いる──中学時代からの片思いの相手「イチ」と、突然告白してきた暑苦しい同期の「ニ」。「人生初告られた!」とテンションがあがるも、イマイチ、ニとの関係に乗り切れないヨシカ。一方で、「一目でいいから、いまのイチに会って前のめりに死んでいこうと思ったんです」という奇妙な動機から、中学時代からひきずっていた片思いの相手・イチに会ってみようと、ありえない嘘をついて同窓会を計画。ついに再会の日が訪れるのだが…。 “脳内の片思い”と“リアルな恋愛”。同時進行で進むふたつの恋の行方は?

勝手にふるえてろ 大九明子 松岡茉優 綿矢りさ 北村匠海 DISH// 渡辺大知 黒猫チェルシー 石橋杏奈

松岡茉優 “普通すぎる” という最強の武器


この映画、一言で言って最高なのだ。何が最高って、原作の勢いそのままに初主演の松岡茉優と黒猫チェルシーのボーカルとしても知られる渡辺大知の “普通すぎる” 魅力(語弊が無いことを祈っている)が爆発している。最初にはなんとも想っていない2人が、最終的に可愛くてかっこよく見えて仕方ないのだ。脇で光るタイプだから、と彼女の主演を1ミリでも心配をした人がいるのなら、ぜひ映画館へ足を運んで確かめてほしい。

誰もがきっと〈ヨシカ〉を好きになってしまう。松岡茉優という役者然した底力を思わずにはいられないけれど、鑑賞直後から「松岡茉優」自身以上に、一にも二にも〈ヨシカ〉が気になって気になって仕方ないのだ。画面のド真ん中で〈ヨシカ〉はとことん笑い、こじらせ、怒り、泣き、叫ぶ。あと、急に歌う。〈ヨシカ〉を形式的な美しいヒロインなんかでパッケージ化できないからこそ、「松岡茉優ならば」と映画化にこぎつけたというエピソードには思わず頷いてしまう。

そしてもちろん、渡辺大知が気になる。黒猫チェルシーのリードボーカルとして活躍する一方、俳優としてはみうらじゅん原作の「色即ぜねれいしょん」で演じた、ボブディランを敬愛してやまない、冴えない童貞ノンポリ高校生は記憶に新しい。彼はこの作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞している。ちなみに今回〈ヨシカ〉の親友を演じた石橋杏奈渡辺大知は、色即〜以来久々の共演。といっても会話はほぼなく、被るシーンも序盤の社内合コンシーンくらいだけれども。

この映画は “片想い” という(あくまで)プロセスを経験した、過去そして現在進行形のわたしたちの物語だ。誰に見つかることもなかったけれど、わたしたちは好きな人を想って携帯のメモ帳にポエムを溜めたかもしれないし、駅の改札をミュージカルヒロインばりに踊って通過したかもしれないし、こじらせきった “片想い” を後生大事に抱え続けていたかもしれないのだ。〈ヨシカ〉がぶつかる瞬間瞬間において、〈ヨシカ〉はあなたであったはずだし、また他の誰かであったはず。自分にしか見せられない溢れる変な部分を切り出して、一人歩きさせた集合体が〈ヨシカ〉というヒロイン像をどうして愛さずにはいられよう!

勝手にふるえてろ 大九明子 松岡茉優 綿矢りさ 北村匠海 DISH// 渡辺大知 黒猫チェルシー 石橋杏奈

結局、わたしたちが求めてしまうのは


物語の中盤で〈ヨシカ〉はふとした時に「イチ」と「ニ」の違いに気づく。正確には、「イチ」への絶対的な違和感に自分で気づいてしまう。「君(きみ)って呼ぶんだ……」と〈ヨシカ〉の口からこぼれるシーンに共感してしまうあたり、結局、わたしたちが求めてしまうのは “相手が自分に向けるベクトル” と “自分が相手に向けることのできるベクトル” の均衡でしかないのだろう。その保証をすっ飛ばして恋愛は始めることはまずできないし、一度向き合ったのならばわたしたちはその均衡を、これまた同じくらいの努力で保ち続けなければいけない。「違和感ないのがいちばんかなあって」と、これまた口からこぼした〈ヨシカ〉にはもう、満点のはなまるをあげてしまいたい。

それにしても昨年今年と、良作のタイトルコールは赤字の題字にロックンロール・ミュージック。ということで、未鑑賞の方は「湯を沸かすほどの熱い愛」も師走のウォッチリストに追加してみて。


「勝手にふるえてろ」

監督:大九明子
出演:松岡茉優、渡辺大知(黒猫チェルシー)、石橋杏奈、北村匠海(DISH//)ほか
配給・宣伝:ファントムフィルム
日本/5.1ch/117分

公式サイト

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©2017映画『勝手にふるえてろ』製作委員会
text. Midori Tokioka



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