横浜美術館初となるファッション展「ファッションとアート 麗しき東西交流」が開催中

CULTURE 2017.05.02
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横浜美術館にて、「ファッションとアート 麗しき東西交流」展が4月15日(土)から6月25日(日)まで開催中です。同館でのファッションを題材にした展示は今回が初めて。京都服飾文化研究財団(以下、KCI)との協働により実現しました。


日米修好通商条約を締結した翌年の1859年、鎖国に終わりを告げた日本は初めて西洋文化に触れ、大きな文化の転換期を迎えます。西洋も同じく、初めて目にする日本文化に影響を受けて「ジャポニスム」と呼ばれる大きなムーブメントが巻き起こりました。今回の展示ではそんな文化の相互交流を、ファションとアートにまつわる211の貴重な資料と共に「東西文化の交差点 YOKOHAMA」、「日本 洋装の受容と広がり」、「西洋 ジャポニスムの流行」の3章構成で描きます。

異文化との出会いは横浜から


日本が開港したことで、西洋文化が初めて本格的に伝わった地である横浜。同時に、西洋との貿易の中心地としても栄え、日本の服や工芸品が積極的に輸出されました。第1章では、そんな横浜の貿易品を展示。当時の貴重な衣服やアクセサリー、工芸品が並びます。



まず始めにお出迎えしてくれるのは、こちらのドレス。「精好(せいごう)」と呼ばれる絹を使った生地を使用しており、不思議な光沢感があります。大胆な菊の刺繍も、伝統的な「肉入繍(にくいりぬい)」の技法で施されたもの。当時の日本の技術が詰まったドレス達は今の時代に見ると、どこかちぐはぐな要素があり新鮮です。



西洋文化が初めて横浜に伝わる様子を、実際に横浜の土地で見ることができるので臨場感も生まれます。目の前にあるドレスが当時、貿易品として行き来していたと思うと、なんだか160年前にタイムスリップしたような気分。



横浜の活気は浮世絵にも描かれました。浮世絵師、歌川(五雲亭)貞秀の《横浜交易西洋人荷物運送之図》は、日本の開国を受けてアメリカ、オランダ、ロシア、イギリス、フランスの交易船が、横浜港に向け一堂に集まる様子を描いた一枚。大小様々な船が立体的に配置されたダイナミックな構図は、イギリスの週刊新聞の1ページを参考にしているそう。西洋の日本に対する注目度の高さだけでなく、日本が西洋から受けた影響の大きさもよく分かります。


工芸品として西洋に輸出されていたアクセサリーにも注目。蒔絵などで装飾された扇子や、七宝焼きのブレスレットとベルトなど、今では中々お目にかかれないほど高度な技術の結晶が並びます。中でも薩摩焼のバックルに施されたカラフルな蝶は、息を呑むほど美しく繊細なタッチ。

洋装への憧れを間近に感じて


明治政府は、西洋と対等な関係を築くために文化と教育の西洋化を進めました。特に衣服を西洋化することは、日本の文明化を見た目からアピールできるということで、力を入れていたそう。第2章「日本 洋装の受容と広がり」は上流階級を中心に徐々に広がった洋装化について描かれます。



写真のドレスは上流階級の女性が着用していたものです。大きく開いた胸元と大胆なバラの刺繍がゴージャス。当時の「洋服」が抱かれていた、希少で豪華なイメージがよく伝わる一着です。明治時代の女性は、こんな優雅なドレスを一生に一度でも着たいと夢見ていたのかもしれません。



男性は制服や軍服からいち早く洋装化が始まりましたが、先ほどのドレスからも分かるように、女性にとっての洋服はとても手の届かない高級品でした。そこで、女性に好まれたのが西洋式の髪型。今まで主流だった日本髪より手軽に再現できて、バリエーションも豊富なので大流行したそう。上の写真は当時のヘアカタログ。三つ編みをアレンジしたヘアスタイルがトレンドだったようです。



西洋式のヘアスタイルが流行したことで同じく取り入れられたのが西洋風のかんざし。べっ甲を使った高級品から、当時の最新技術であったセルロイドで作られたものまで、幅広く見ることができます。



昭和の初めになると市民の洋装化も広がり、街中ではスタイリッシュに洋服を着こなす「モガ」(モダン・ガール)と和服の女性が入り混じります。写真は昭和10年に銀座の5丁目で撮影されたもの。自分らしいスタイルを持ち、活き活きと歩く女性の姿には今の時代に見ても憧れを感じます。

着物からKimonoへ。広がるジャポニスムの動き


日本が開国して以来、西洋から芸術家、商人、宣教師など、様々な職種の人が訪れることになり、彼らが持ち帰った日本の芸術品は各国で話題となります。特に、芸術家の間で日本的な要素を取り入れた作風が流行し、ヨーロッパを中心としたムーブメントに発展。後に「ジャポニスム」と名付けられることになります。第3章「西洋 ジャポニスムの流行」では、日本文化が西洋で注目され、「ジャポニスム」として模倣される中で徐々に独自の文化へと発展する様子を描きます。


19世紀後半まで海外との交流がほとんど無かった日本は、西洋の国々にとってミステリアスでどこか気になる存在。その中でも興味を引いたのが、1867年の第2回パリ万博で初めて披露されたきものです。西洋の服には見られない直線的なデザインは、まだ見ぬ日本人女性への想像をかき立て、芸術家達はこぞって和服を身に纏った女性を描きました。写真の扇子を口に当てた女性はフランスの画家、ジュール=ジョセフ・ルフェーヴルが描いたもの。どこかミステリアスで、セクシーに微笑む女性像は日本に対する憧れを象徴しているかのようです。豪華な装飾を施した額に収まる、高さ1.3メートルの迫力ある一枚は、目が合うと思わずドキリとしてしまう魅力があります。



きもののゆるやかなボディラインは、コルセットの着用が主流だった当時のレディースファッションに大きな影響を与えました。フランスのデザイナーを中心に、ゆったりした袖周りや、きもの風の帯、打ち合わせなどのデザインが次々と発表され、パリジェンヌの間ではきものらしさを取り入れた独特なコートが多く見られました。



ジャポニスムの影響は工芸品にも見られます。槌目で表現された水面を悠々と泳ぐ魚や、瓢箪が描かれた手前2つの銀器はなんとティファニー商会のもの。デザインは日本的ですが、上品な銀の輝きと洗練された佇まいはやはりティファニーらしい高級感。意外なブランドも日本の影響を受けていることを知って、どこか誇らしくなります。



クライマックスにかけて並ぶのが、1920年代にポール・ポワレやココ・シャネルなど、名だたるデザイナーが作ったきもの風のコートやワンピース。ツヤがあるサテン地に鮮やかな朱色のイヴニング・コートはLANVINの創設者、ジャンヌ・ランヴァンのデザイン。一見すると振袖のようですが、襟は羽織のディテールが取り入れられています。このように、西洋では独自の解釈できものが再現されて、「Kimono」として新たなファッションが誕生しました。

迫力の大礼服、マントー・ド・クール


今回の展示で何としても見ておきたいものといえば、第2章の最後に現れる昭憲皇太后の大礼服。新年式の際に着用されていた一着で、「マントー・ド・クール」と呼ばれます。床を覆うようなベルベットのトレーンに施された、菊の刺繍は息を飲む美しさ。広い部屋の中央にこの一着のみが鎮座する大胆な空間演出もその神秘性を高めています。



そんなマントー・ド・クールと向き合うように、着用者である昭憲皇太后の肖像画が飾られます。巨額の資金を投じてドイツから調達されたというダイアモンドのティアラと大ぶりな三連ネックレスが、皇族らしい優雅な佇まいを引き立てています。昭憲皇太后は自ら積極的に洋装化を進め、宮中の儀礼を行う際にはいつも西洋式の豪華なドレスを着用していたそう。皇族という伝統を重んじる立場ながらいち早く異国の要素を取り入れた皇后は、いわばファッションアイコン。着用された背景を知ることで、マントー・ド・クールが当時与えた衝撃の大きさが一層よく分かります。



この展覧会は2013年より企画され、開催に向けドレスの修復やマネキンのリサイズが始められたそう。長い時間をかけて再現された貴重な作品の数々からは、横浜美術館とKCI、そして当時の職人による並々ならぬ情熱を感じます。ゴールデンウィークの思い出として、煌びやかでエキゾチックな芸術品に囲まれる非日常を体験してみてはいかがでしょうか?


「ファッションとアート 麗しき東西交流 」展

会期: 2017年 4月15日(土)〜6月25日(日)
会場: 横浜美術館
開館時間: 10:00〜18:00 ※5月17日(水)は20:30まで開館(入館は閉館の30分前まで)
休館日: 木曜日(5月4日[木・祝]は開館)、5月8日
観覧料: 一般当日1,500円 ほか

HP


Text :Koki Yamanashi
Text&Edit : azu

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